約 2,021,134 件
https://w.atwiki.jp/yandere_mozyo/pages/102.html
167 :163:10/05/22 04 00 03 ID zkzqMPxA 眠れぬ夜に、案は書いとく! あくまでも一案ね。 ポイント固定はさ、そんなに単調にはならないと思うんだ。後付けると大変だと思うけど。 一つの話内で分岐があっても、合計ポイントが定数ならいいと思うし。 例えば、ポイント合計最大数が2だとして、「ハムはかわいい」って話があったとするね。 ----- ▼ハムはかわいい 私は最近すきなものがある(選択肢) ある(ポイント+1) ない →朝ご飯どうする?へ。 ▼朝ご飯どうする?(選択肢) ハムエッグ(ハムエッグに分岐) ヤンデレ(ヤンデレに分岐) ▼ハムエッグ ハムハム食べてたらハムスターが出てきた。(選択肢) 食べる 逃がす(ポイント+1) →終了 ▼ヤンデレ ヤンデレがあーんしてきた。(選択肢) あーん(ポイント+1) イラネ →終了 ▼終了 「ハムはかわいい」のポイントが一番高かった! ハムエッグに分岐していた場合→ハムスターのエンディング発生。 ヤンデレに分岐していた場合→ヤンデレのエンディング発生。 ----- わ、わかるかな……。話ひどいのは勘弁ね。 ハムエッグに分岐しても、ヤンデレに分岐しても、ポイント最大数は2なのね。 これなら分岐数は固定しなくていいと思う。一つの話のエンディングも複数作れるし。 各話ごとに、「ポイントがいくつか」と「一番だった時どのエンディングになるか」を記録しておけば いけるんじゃないかなあと思うんだ。エンディング一つのやつは「ポイント」だけでいいけどね。 ちなみに「本を閉じる」選択肢があるといいかなと思ったのは、 各話のポイント一位エンディングを見るために毎回全部の話を見るのは大変かなと思ったのと、 ポイント上がる個所が少なくてもポイント一位が複数になりにくいかと思ったから。 現物作れればもっといいと思うけど、今ちょっと時間ないんだ。ごめんよ。 図示してみたよ!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2480.html
980 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 37 35 ID 1Tyg1Pd. 中等部三年生が終わるころである。 俺は、空港の広い廊下で、九重かなえと会っていた。 と、言うよりも別れていた。 「キミもまぁ、よく来たものだね。今日出発だ、なんて学校の連中に伝えてなかったのに」 これから、俺達と別れて海外へ転校する飛行機に乗る直前。 そんなタイミングでも、九重はいつも通りの笑顔だった。 「伝えて……欲しかったかも」 内心のざわめきを抑え、俺は言った。 ちなみに、この辺りの諸々は一原先輩調べだ。 あの人には今も昔もかなわない。 「立つ鳥跡を残さず、って言うでしょー?いや、この場合は断つ鳥、かなー?」 「……もう、遅い」 少なくとも、俺の心には彼女の存在がしっかりと刻みつけられていた。 跡が、残るほどに。 「かも、ねー。正直、ココには中途半端に長く居すぎたなー」 いつもの笑顔を崩すことなく九重は言った。 「居てくれて、良かった」 俺は、自分の想いを真っ直ぐに伝えた。 「そうー?」 「……もっと、居て欲しかった」 「……そっかー」 九重は、笑顔のまま視線をそらした。 九重は目を細めているので、その変化は俺にしか分からなかっただろうけれど。 「そう言えば、さ。全然関係ないけど、ボクもキミみたいな夢を見てたことがあるんだー」 「……夢?」 「驚くことないでしょー?ボクとキミは、同類なんだからさー」 同類、それは俺に評してしばしば九重が言ってくれた言葉。 しばしば否定的な文脈で使われるその言葉は、苦しくもあり、それ以上に嬉しかった。 彼女に会うまで、誰かにきちんと向き合ってもらい、必要とされたという感覚が無かったから。 「誰かに向き合ってもらえて、必要とされて、絆を紡ぎ、愛してもらえる。そーゆーヒトと出会うことができる。そんな夢を、見てたことがある」 淡々と、彼女は語る。 その度に、俺の心のざわめきは増していく。 心臓の鼓動が速くなることを、感じる。 「まぁ、その夢が叶わなくもないかなーなんて少しだけ思えたとしたら、ココに長く居た意味もあったのかもしれないねー」 クスクスと笑いながら、冗談めかした口調で九重は言った。 「ねぇ」 俺は胸の奥から言葉を吐き出す。 「その夢は、叶ったの、かな?」 その相手は俺だったのか、と聞けない自分がもどかしい。 「いいや」 俺の言葉に、九重は笑顔を消し、切れ長の形の良い目を見開いて言った。 しっかりと、俺に向かって断言した。 「その夢は、叶わなかったよ。昔も。そして、今この瞬間も」 九重かなえ 俺こと御神千里の、夜照学園中等部所属時代の同級生。 同じく、生徒会役員。 年中、黒の長袖にストッキングという、極端に露出の少ない姿。 年中、糸目の笑顔。これを崩したところは一度しか見たことが無い。 身長は、女子としては低くも無く高くも無く。 髪の長さは背中に届くほどのロングヘア。 どちらかと言えば不健康な印象を受ける色白の肌。 いつでもどこでも、常に突出して目立つことは避けるタイプ。 しかし、一方でその容貌は可愛い系か美人系かと聞かれれば―――間違いなく美人。 それも、そうそういない位の端正な美形。 あまりに整いすぎていて、それが逆に無個性に見えるのが欠点だが、それは彼女自身が自ら進んでそうしている節がある。 もっとも、彼女の内面分析ほど無意味なことは無いのだが。 笑顔のポーカーフェイスの下に隠れた内面を、彼女は決して見せようとはしないのだから。 そんな彼女に、俺は惹かれた訳だけれども。 そんな彼女が、俺に最も近く、最も恋した相手である訳だけれど。 そう、決してかなわぬ想いを向けた相手。 その彼女が、今、こうして、目の前に、いる。 「ここの・・・・・・え?」 「ボク以外のナニに見えるのさー?」 と、驚愕する俺と対照的に、まるでかつてと変わりの無い態度を示す九重。 「どう・・・・・・して」 「何がー?」 何が、と聞かれると答えに窮する。 と、言うより聞きたいことが多すぎて、何から聞いていいのか分からなくなる。 「って言うかさー」 ひょいひょい、と俺の足元を指差して九重は言った。 「いー加減、さ。エレベーターから降りないと、ドア閉まるんじゃない?」 「へ?」 ガシャン、と言う音と共に俺たちが遮られたのはそれとほぼ同時だった。 「ちょ!?ま!?閉まらないで!降ります!降りますから開けて!あけてくれ!」 俺の叫びも空しく(?)エレベーターは自動で設定された通りに1階へと降りていくのだった。 981 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 38 26 ID 1Tyg1Pd. 閑話休題。 「む、無駄に疲れた・・・・・・」 「いやいや、そんなこと言われてもー」 改めて元のフロアに戻ってきたとき、俺は心なしかグッタリしていた。 剣道場での死闘(笑)の疲れも重なり、二重にクるものがある。 いや、フツーに1階からエレベーターで上がりなおしただけなんですけどね? ちなみに、九重は先ほどと同じ位置。 俺が戻るまで態々待っていたのだろうか・・・・・・? 「に、しても九重。いつから日本に?海外にいるって聞いてたけど?」 今度こそエレベーターから降りると、俺は九重に問いかけた。 「そうだよー?昨日まではイギリス、今日からは日本」 つまり、今日着いたばかりらしい。 つまりは、その足で俺の住むマンションまで直行してきてくれた、ということになる。 「そう言う事なら、ケータイにメールくらいくれても良かったのに」 「ああ、ゴメンゴメン。ボク、ケイタイとか持って無いしさー」 ひらひらと手を振りながら言う九重。 以前と全然変わらない仕草だった。 「って言うか、ケイタイとか買ってもらえたんだ」 九重の目に宿る感情は、読めなかった。 これも、以前の通り。 「ああ、高等部進学祝いに、親からね」 「・・・・・・へぇん」 なぜだろう。 どうにも九重とのトークがやり辛い。 久々だからだろうか。 九重は、以前と全く変わっていない筈なのだが。 いや、強いて言えば。 「少し、髪質が悪くなった?」 スッと九重の髪に手を触れて、俺は言った。 「…!?」 隣で三日が息を飲んだことに気付くことなく。 「……んー、そだねー。日付跨いでエコノミークラスに座ってたから、そう見えるかもー」 「ああ、そう言う事か」 俺は海外旅行の経験もほとんど無いし、九重の髪についてはエキスパートとはいかない(精精がプロ)なのだが、彼女がそう言うのならそうなのだろう。 「後で、シャワー借りるねー」 「ああ、構わない」 「・・・」 「ところでー」 つい、と俺の隣に視線を移し(これは九重との会話になれたから見分けられる、彼女の微細な変化だ)九重が言った。 「さっきから隣で、ボクに向かってネツレツな視線を向けている可愛いお嬢さんはどなたさまー?」 「うぉ!?」 隣を見ると、三日が剣呑な雰囲気を纏って、九重に向かって刺すような視線を向けていた。 「参ったなー。ボクは女の子が大好きってワケじゃないんだけどなー」 「別に、お前にはあげない」 三日はモノじゃない、というツッコミはさておき。 「それで、そこのソレはどこのナニ?」 「・・・・・・」 九重の日本語が微妙におかしい気がしたが、そこはスルー。 「コイツは緋月三日。俺と同じ夜照学園高等部の生徒で、学年もクラスも部活も一緒」 「・・・どこでもいっしょ」 恨みがましい声音で面白い合いの手を入れるなよ、三日。 リアクションに困る。 982 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 38 53 ID 1Tyg1Pd. 「なんだ、クラスメートなのか」 「それ以外の何に見える?」 「妹さん」 「俺に兄弟姉妹がいないのは、お前も知ってるだろ?」 「・・・」 俺の発言に、なぜか剣呑なまなざしを向けてくる三日。 「ああ、ゴメンねー。コイツ、女の子を自宅にあげるのが趣味みたいなトコがあるから」 「誤解を招くような発言だな・・・・・・」 「・・・あなたも」 と、その時初めて明確に、三日が九重に向かって問いかけた。 「・・・あなたも千里くんに『自宅にあげて』もらったことがあるのですか?」 三日の問いかけに、九重はすぐには答えなかった。 「千里くん、か」 と、ただ三日の言葉を反芻した。 「・・・どう、なんですか?」 「勿論。中等部にいた頃は、頻繁に招待されたものだよ。家族や恋人と同じくらい、彼の自宅に一緒にいた時間は長かったんじゃないかな」 恋人、という言葉に、三日の拳がささやかに、しかし強く握り締められるのが分かる。 「・・・恋人は」 意図的に感情を押し殺したような声で、三日が言った。 「・・・恋人は、私です」 「……何だって?」 「・・・千里くんの恋人は、私です」 三日の言葉に対して、九重は、 「これは中々、面白いジョークだね」 と、表情を変えずに言った。 ポーカーフェイスな、笑顔のままで。 「・・・冗談ではありませんし、冗談じゃありません」 握りこんだ拳が震えるのが分かる。 「み、三日。落ち着「千里くんは黙ってて!」 驚いた。 三日が、俺の言葉を遮ってまで、ここまで声を荒げるなんて思っても見なかった。 「今年の五月から!千里くんと私はずっとずっとずっと愛し合ってきました!ご自宅に行ったことだって何度も何度もあります!初めてのキスだって捧げたんです!だから・・・・・・」 「今年の五月、ねぇ」 どれだけの激情をぶつけられても、九重に動じる様子は無い。 「それに、キス止まりか。まぁ、らしいと言えばらしいけど」 「ならどうだって言うんです!?」 「コレの中身を、どれだけ理解してるのかな、って言ってるかなー」 「!?」 三日が、猛然と九重に飛び掛ろうとする。 それを、両肩を掴んで辛うじて止める。 「三日!」 「離してください!」 「落ち着け、三日!」 「千里くんどいて!そいつ殺せません!」 この女―――!! 「落ち着けと言っている!!」 俺は、三日に、怒声を浴びせていた。 「・・・・・・こんな天下の往来で、物騒なことをするもんじゃぁ無いってコト。立ち話もなんだし、取りあえず家に戻ろうよ、ね?」 そう、俺は取り繕うように三日に笑いかけた。 ソレに対して、三日は不承不承と言った顔で、頷いた。 983 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 41 21 ID 1Tyg1Pd. かすかに、シャワーの音が聞こえている。 「さっきは、ゴメンね」 三日と九重を我が家に招き入れ、今は九重にシャワーを浴びてもらっていた。 俺と三日は、リビングで背中合わせに座り、九重を待っていた。 何とは無しに取った姿勢だったが、三日の背中の小ささと、彼女の温もりが伝わってきて、ドギマギする。 こんなことを考えてる俺は、相も変わらず――――汚らわしい。 「・・・何が、ですか?」 「大声、出しちゃったコト」 「・・・」 三日の表情は見えない。 「それに、何ていうかさ。俺と九重は、お前が思ってるようなカンジじゃないから。だから、安心して欲しいな」 「・・・それは、聞き及んでいます。…かつて、千里くんがあの女の存在に誑かされていたことが…」 「違う」 そう、俺は三日の言葉を否定した。 「俺はともかく、九重にそう言う意図は全くなかったよ。だから、俺と九重が友達を超える関係になることは、天地が裂けてもありえないよ」 俺は、きっぱりと断言した。 「・・・千里くんにとって」 「うん?」 「・・・千里くんにとって、九重かなえって何なんですか?」 三日の声が背中に響いた。 「似たもの同士。心を通わせた同士。昔、かなわぬ想いを向けた相手。それ以上でも以下でも無いよ」 「・・・」 俺の言葉は、三日にどのように響いたのだろうか。 いや、そもそも、俺という存在が三日の心にどのように響いているのか、俺はきちんと理解しているのだろうか。 「・・・なら、私は?」 「え?」 「・・・私は、千里くんにとってどのような存在なのですか?」 俺にとっての三日、か。 「改めて改まって聞かれると、難しい質問だな」 正直な気持ちを表しつつ、考える。 「俺にとってお前は―――」 その質問に答えきる前に、リビングのドアが開いた。 984 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 41 44 ID 1Tyg1Pd. 「シャワー、終わったよ。型通りに、『良いお湯だったよ、ありがとう』と言っておくべき、かな」 「…他所のお風呂を借りた人間の台詞ですか、それが」 リビングに入ってきた九重に、三日が聞こえるか聞こえないかと言う声で呟いた。 恐らく、と言うよりまず間違いなく九重に伝えるつもりでの言葉なのだろうが。 「どういたしまして、と言わせてもらうよ。型通りになるまでもなく」 「そー」 「折角だから、ウチで食べてく?この後作るつもりなんだけど?」 「…千里くん」 「うん、お願いー」 相も変わらず、感情の動きを見せることなく九重は応じる。 俺にとっては、それが嬉しくもあり、寂しくもある。 久し振りの再会なのだから、もうすこし感動とはいかないまでも、感慨くらいはあっても良いと思うのだが。 もっとも、感謝の1つも見せない女ので、初対面の人間には、無礼で無作法に見えるかもしれない。 「三日」 先ほどから恨みがましい眼をしている三日の頭を、俺はクシャっと撫でた。 「……」 「九重の態度にどうこう思ったって仕方がないよ。コイツはこういう奴だ」 「…千里くんがそう言うなら」 俺の掌の下で答える三日。 ほんの少し頬を膨らませるのが可愛らしい。 「どうでも良いことだけど、女の子の髪をそんな風に触るのは、セクハラと暴力のどちらにあたるのかなー?」 「変なタイミングで水差すなよ……」 「だからー、どうでも良いことじゃないー?」 ……やりづらい。 「ンじゃぁ、これからどうするー?ご飯作る時間まで、3人で何かテレビゲームでもする?」 「や、千里はもう適当に作りはじめちゃってよー」 俺が提案すると、九重はそれをあっさりと却下した。 「…なら、私は千里くんと」 「そんなのはコレに任せなよー、三日さん」 俺に着いてこようとする三日を、やんわりと制する九重。 彼女が三日のことを名字では無く名前で呼んだことに、俺は少なからず驚きを覚えた。 まるで気さくその物で捉えどころの無い九重だが、他人を名前で呼ぶことも、他人に名前を呼ばせることも、俺の知るかぎり許したことが無かった。 勿論、海外で暮らしている中では、名前で呼ばれることは少なからずあっただろうが……。 「キミがいない間に、女の子同士の会話、って奴をしたいと思ってさー」 「でも……」 どうにも、九重の思惑が読めない。 三日が未だにあからさまに九重に心を許していないことに気が着かないほど、彼女は鈍感では無いように記憶しているのだが。 大体にして、この2人を一緒にして、良い予感がしない。 九重が三日のことを名前で呼んでいることが、希望だと言えなくは無いことも無いけれど……。 しかし、 「構わないよねー」 九重はいつもの笑顔でそう言った。 ノー、と言われることを全く想定していない声音で。 俺が九重に逆らおうと考えること自体が無意味だった。 惚れた弱みと言う奴である。 俺は、サクっと米を磨いで炊飯器にセットすると、台所で野菜や調理器具を用意する。 九重には悪いが、夕飯時も近づいてきたので、あまり時間のかからない物にさせてもらおう。 コンソメスープに使う鍋に火をかけ、おかずの野菜炒めに使うタマネギをスライスしながら、俺は深呼吸をした。 正直、今の俺は不安定だ。 九重の顔を見るたびに感情が揺らぐ。 動悸が早くなる。 彼女のために、殉じようと思う。 これは、無視できない事実だった。 オーケー、認めよう。 認めて、受け入れよう。 無為で無意味なことに、俺は九重を未だ憎からず想っている。 彼女を慕い、想い、焦がれている。 手の届かない偶像を見上げ、憧憬の念を抱くように。 けれども――― そこまで俺が感情を整理したところで、金属の倒れる音が聞こえた。 985 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 42 58 ID 1Tyg1Pd. いつも聞きなれた音、千里くんの音。 それが、今日はどこか遠くに聞こえる気がしました。 それは、恐らくこの女のせい。 「?」 女は、きょとんとした風に小首を傾げました。 こう書くと漫画的なようですが、実際はあくまで自然で、あまりにも自然すぎました。 自然すぎて、完成されすぎた仕草。 私は、そんな仕草をする人間が、この世に『2人も』いるとは思えませんでした。 それも、表面だけは千里くんに良く似た笑顔をする人間が。 そう。 男女の違い、顔立ちの違いこそあれ、2人の笑顔は良く似ていました。 2人並んで兄弟姉妹と言われたら、信じてしまいそうなほどに。 それにも関わらず、受ける印象は全く異なりました。 千里くんの笑顔は、己の中の温かな気持ちを前面に押し出した、優しい笑顔。 この女の笑顔は、笑顔のための笑顔。 面立ちが整っていることもあり、これ以上なく美しい表情ながら、笑顔にこめられた感情が感じ取れず、仮面のように薄っぺらい。 薄っぺらで、恐ろしく―――不愉快。 その癖、私の心を酷くざわめかせ、落ち着きを奪います。 初めて会った瞬間に分かりました。 千里くんとの過去とか、そういうこととは無関係に、私はこの女が嫌いだ、と。 「・・・何を」 「?」 「・・・何を、考えているのですか?」 しかし、それでも先に口を開いたのは私でした。 この女と無言で2人きり、という状況に耐えかねて。 先制攻撃こそできたものの、どうにも負けた気分。 「何を、と言われても、いきなりざっくりしすぎてて、何のことを言っているのか分かんないかなー」 そう、薄っぺらな笑顔で返してきた女に、嘘を吐け、と私は内心毒づきました。 普段、千里くんの語りの中での私は幾分かマイルドに描かれてはいますが、一方で私はごく当たり前に何かを不快に思ったり、誰かを嫌いになったりすることもある人間です。 そして、その悪感情が、過去最高に高ぶっていました。 「・・・強引に千里くんを追い出して、私と2人きりになんてなったことです。・・・正直、どうしてあなたがそんなことをしたのか、意味が分かりません」 「強引に、なんてことも無いよー」 ひらひらと手を振って(これも、時折千里くんの見せる仕草)不愉快な女は切り替えした。 「まぁ、確かにキミとお話したかったことは確かかなー」 「・・・」 女の言葉が本心から出たものとは、私にはとても信じられませんでした。 こう見えて、私は言葉に込められた悪意も、言葉に込められた善意も、読み取るのはそれなりに得意なつもりです。 しかし、この女の言葉にはそのどちらも感じられませんでした。 それくらい、無色透明な言葉と、無色透明な笑顔でした。 透明すぎて、逆に自然とは言い難いほどに。 「・・・あなたを楽しませられるほど、私、お話は得意ではありませんよ?」 と、言うより、この女を心底楽しませられる人間がいたら見てみたいものです。 「あ、ひょっとして『人見知りだけど初対面の相手を楽しませなくちゃ』とかハードル上げちゃったー?ゴメンねー」 見透かしたようなことを、言うな。 どこかで見たような口調で。 どこかで見たような笑顔で。 どこかで見たようだけれども、それとは180度違う、ナニカで。 「大丈夫大丈夫。ボクは別に、いかにも聞き役なキミに積極的に何か話せとか無茶振りするつもりは無いよー。ただ、ちょっと聞きたくてさ」 「・・・あなた、前置きが長いですね」 見ているだけで苛々する。 不快感が増す。 ただ存在しているだけで、私の大切な何かが蹂躙されていくような気がする。 「・・・お話があるならすぐにお聞きしますし、ご質問があるならすぐにお聞きします」 だから、早く話を終わらせたかったのです。 「じゃぁ、遠慮なくー」 と、彼女はそう言って、不愉快な笑顔のまま、 「キミは、御神千里をどこまで理解してるのかな?」 と言いました。 「・・・は?」 疑問、と言うよりも怒気を孕んだ声を、私は発していました。 「んー、単に『御神千里』だけだと、さすがにそれこそざっくりしすぎてたかなー。ボクが言いたいのは、たかだか数カ月のお付き合いで、千里の性格?本質?あるいは・・・・・・」 「・・・千里くんがどれほどの方なのか、などあなたに言われるまでもありません」 言葉を発するな、息を吐き出すな、この場を、千里くんの場を、汚すな。 「・・・そして、あなたになど理解の及ばない範囲まで、私は千里くんを全て理解し、愛しています」 「おや、おやおや」 誰が見ても意外そうな表情を作って、女は言いました。 986 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 44 15 ID 1Tyg1Pd. 「おやおやおや。それはおかしな話だねー。理屈の通らないと言っても良い」 どうやら、本格的に毒を吐かれているようですが、そんなことはどうでも構いません。 この女の存在自体が、既に毒なのですから。 「・・・おかしいことなど、どこに・・・」 この女と対峙しているだけで気持ち悪い。 言葉を発するだけで、不快な気分になる。 「だってそうだろう?あの男の全てを理解しているなら―――あの男の醜悪さを知っているのなら、到底愛する気になんてなれないじゃないか」 不快な言葉が、積み重なる。 「キミの知る御神千里はどんな人間かな?穏やかな男?優しい男?頼れる男?道化た男?だとしたらまぁ、浅はかな理解と言わざるを得ないねー。いや、ここはむしろ千里の演技力を褒めるところか」 不快な何かが、私の中に積み重なる。 「自分の醜さ悪さを包み隠す演技力。それが向上したことを男前が上がったと言うのなら、ボクは惜しみなくその言葉を使おう。けれども、どれだけ男前が上がったとしても、あの男の本質は変わらない」 やめて下さい、お願いですから。 「優しさと言うその薄っぺらな仮面で、彼は全てを誤魔化してる。自分をそしてキミを。彼は決して人を信じない男だ。人と分かり合えない男だ。人と断絶した男だ。キミのその浅はかな理解は、結局のところあの男が自分の本質を誤魔化すための虚飾でしかない」 やめて、下さい。 「彼は嘘吐きだよ。誰かを大切にしてる、誰かを愛している、そんな嘘を他人と自分に吐くことで、自分の醜さを隠している醜く卑屈で卑劣な男」 やめて。 「そんな彼の嘘に、キミは使われてるって言う訳さ。君はまぁ、言ってみれば、彼のアクセサリ?お人形?もしくは―――『遊び』の相手?」 …やめろ 「ハッキリと言おうか?あの嘘吐きは誰も愛せない。キミでさえも―――愛せない」 やめろ!! 「・・・れが」 立ち上がる。 激情のままに。 椅子が倒れる。 ダイニングに用意された、ナイフやフォークが散乱する。 袖口から、隠していたナイフを取り出す。 「だれが嘘吐きだ!!!!!!!!!!!!」 そのまま、虚飾にまみれた笑顔を切り裂こうとした瞬間、 「三日!九重!」 いつになく必死な形相で台所から飛び出してきた千里くんの姿が見えました。 けれども、振りぬいた勢いのついたナイフは止まりません。 ナイフは、深々と突き刺さりました。 九重かなえの目の前に突き出された、千里くんの掌に。 「・・・せんり、くん?」 うそ、しんじられません。 「と、貫通はしていない、か。大したことはなさそうだねー」 痛みで軽く顔をしかめながらも、千里くんは私を安心させるように笑いました。 そして、ナイフを受け止めたのと反対の手で、私の頭をクシャっと撫でました。 「に、してもまだこんな物騒なモノを持ち歩いてたのかなー?三日にはこんな無粋なモノは似合わないと、俺は常々思っていたんだけどね。氷室先輩とキャラ被っちゃうし」 その言葉に、ナイフを持った手の力が抜ける。 ナイフが抜けて、千里くんの手から血が流れ出す。 「・・・手、怪我・・・・・・」 「と、そうだった」 千里くんは私の頭から手を離し、ポケットから無造作にハンカチを取り出すと、掌に無造作に撒きつけ、縛りました。 片手がふさがっているので、縛るのは口でするという野性味溢れる治療でしたが。 「こうして止血しとけば、取りあえずは何とかなりそう」 そう言って真っ赤に染まるハンカチを巻いた手を、ひらひらと示して千里くんは笑いました。 千里くんの仕草に、あの女が先ほど行った仕草が思わず重なります。 重なり、そう感じてしまった自分を恥じました。 この女と、千里くんは毛ほども似て無いことは分かっているはずなのに。 「んで、九重」 私から目を離し、千里くんは女に言いました。 987 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 44 41 ID 1Tyg1Pd. 「ここはお前を咎めるべきなんだろうけれど、何て言って咎めるべきなのかな?」 「おやー、ここは凶器を行使した彼女を責める場面では無いのかな、常識的に考えて」 「安心して。俺もいじめはいじめられる方が悪いだなんて、いじめる側の理論を肯定する気は毛頭無いよ」 けれど、と千里くんは言いました。 私の肩に、ポンと片手を置いて。 「火の無いところに煙は立たずってね。コイツは全く何一つ理由無く暴力を行使するほど理不尽な奴じゃ無い」 「根拠は?」 「根拠なんて無いし、いらないよ。ただの経験則。大方、昔俺にしていたような言葉責めの片鱗を、コイツに見せちゃったんだろ?」 九重は地味にドSだからねぇ、とため息交じりの冗談交じりに、千里くんは言葉を続けます。 いかにも、これは大した問題ではないと言う風に。 「前々から思ってていえなかった事の1つだけどさ、お前の言葉責めに唯々諾々と耐えられるのは俺ぐらいなンだよ?」 俺ぐらい、と言う言葉の響きに2人の信頼関係が感じられて、寂しい。 「思ってて言えなかった事の『1つ』、ねー」 先ほどから何ら何一つ変わらぬ笑顔で、九重かなえは含みのある言い方をしました。 「ま、それはともかくボクはあやまらないよ。ただ、このコにちょっとした親切心からちょっとした忠告をしただけー。だから、謝らないしー、誤りは無いよー?」 「珍しく明確に強情だな。まぁ、そう言われたら、って言うか、どう言われても俺はお前に強く出れないな」 「分かってるじゃないか」 クスリ、と笑う九重かなえ。 「千里のそう言う所が、一番―――好きだよ」 ドキリ、としました。 私ではなく。 千里くんが。 目を見開き、軽く頬を赤らめ、明らかに虚を疲れたと言う表情で。 千里くんのこんな表情、今まで見たことがありませんでした。 それを、よりにもよってこんな女に見せるなんて―――! 「ああ、まぁ。社交辞令として受け取っておくよ」 一瞬動揺してから、冷静さを取り繕いながら千里くんは言いました。 「しっかし、食事はどうしたものかな。スープは出来るところなんだけど」 「ありもので良いんじゃないかな?どうせ、昨日の残りでものこってるんだろう」 「まぁ、そうなんだけどさ・・・・・・」 親子でたった2人暮らしの千里くんは、しばしばうっかり食事を作りすぎて食べきれないことがある、と。 彼女もまた、それを知っているということなのでしょう。 それは、事実ではある、のですが。 「…大丈夫です」 と、私は言いました。 「…大丈夫です。私が千里くんのお手伝いをしますから」 これ以上、この女の自由にさせられなかったから。 988 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 45 12 ID 1Tyg1Pd. 「何考えてるんだ、アイツ……」 俺が、御神千里がその言葉を吐き出せたのは、なぜか味を覚えていない食事シーンを終え(食事中なのに胃が痛くなるような気分だった、とは言っておこう)三日を自宅まで送る道すがらのことだった。 九重に対しては、一応送って行こうかとは言ったのだが、やんわりと、と言うよりあっさりと断られた。 「あ、そうそう」 と、九重は去り際に付け加えるように言っていた。 「ボク、明日キミたちの学校に転入してくるから」 マジっすか。 だとしたら、どうして九重は態々俺の家を訪ねたのだろう。 同じ学校ならば、会う機会なんて十分すぎる程にある。 九重にとって、俺が転校してくる前に態々会いに来るほどの相手であった―――と言うことはぶっちゃけアリエナイ。 宇宙人によって引き起こされる惑星間宇宙犯罪と同じくらいアリエナイ。 九重にとって、俺は影だ。 彼女の影だ。 最も近しく、それと同時に尤も取るに足らない存在。 まぁ、九重が誰か(あるいは何か)に特別取り立てて強いこだわりを見せたことなんて、見たことも聞いたことも無いのだけれど。 そのセオリーを、敢えて破ったのは何故だ? あまりにも、必然性がない。 彼女の目的が、分からない。 九重が、俺が最も愛した女性の考えていることが、痛い位に分からない。 「…私には分かります」 自宅へと向かう夜道で、三日はそう言った。 「え?」 鼓動が跳ね上がるのが分かる。 「…千里くんが何を考えているのか」 「ああ、そっち?」 何故分かった、とは聞くまい。 他人に隠す余裕がない位には自分の考えに没頭していたことには自覚がある。 「…あの女のこと、ですよね?」 問いかけと言うより確認に近い声音で、三日は言った。 「…自分のことも、私のことも、それにその掌の痛みさえ忘れて、あの女のことに、思考を浸食されて」 「気にしてくれてたんだ、手のこと」 「…結果として、私が刺してしまったもの、ですから」 無為にあなたを傷つけてしまいましたから、と三日が少し辛そうな顔をする。 「ああ、コレくらいなら何てことないよ。九重を守ってやり合った時なんてもっと……」 と、言いかけて俺は黙った。 失言だった。 三日が九重のことを気にしているのは明らかだったのに。 「…」 「……」 そのまましばらく、気まずい沈黙が場を支配して、 「…好き、なんですか?」 と言う三日の言葉で、破られた。 「数寄?」 「…この発音でお茶に打ち込むことを連想する人もそういないと思います」 すき、という一音で何と言ったか分かる奴も珍しいが。 「…好き、なんですか、あの女のことが。…そんなに良いんですか、あの女のことが。…そんなに気になるんですか、あの女のことが。…そんなに一緒にいたいんですか、あの女と」 「九重のことか」 無表情で、ただコクリと頷く三日。 「アイツは―――」 と、俺が言いかけた瞬間、だったはずだった。 三日の姿が消失していた。 989 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 45 58 ID 1Tyg1Pd. 否、三日だけでは無い。 周囲に人間が1人もいなくなっていた。 こんなこと、前にもあったような。 そう、夏祭のときと同じ! 「こんなことをするのは、緋月誰さんか、な!?」 唐突に、後ろから殺気が生まれた。 「ハッ!」 男性的な声と共に振るわれた刃を避けられたのは、奇跡のようなものだった。 あるいは、先だって戦った強力な彼のお陰か。 「よ、とっと……!?」 体をひねり、振り向きざまに距離を取る。 襲撃者の姿を観て、俺は驚愕した。 「違う!?」 相手は、夏の襲撃者、緋月零日さんでは無かった。 性別や体格を隠す、フード付きのコート姿。 その下の顔には顔全体をすっぽりと覆うマスク。 その手には、180cmはあろうかと言う伸縮式の長い棒の先に、刃が供えられた武器。 大鎌と呼んでよいであろう、身長を超える武器をやや持て余し気味に持った人物。 「……!」 その人物が、再度距離を詰めて大鎌を振るう。 「お前、一体……」 距離を詰め、大鎌の柄をいなしながら、俺は抗議の声を上げる。 「ボクの名は、緋月、一日」 その人物は、芝居がかった口調で、そう、名乗った。 「初めましてと言うべきかな。ボクの大事な下の妹に寄りつく屑虫くん」 言葉と共に、胴薙ぎの一撃。 それをバックステップで避けると、突きあげるような攻撃が襲いかかる。 「がッ!?」 柄の付け根が喉に入り、俺は苦悶の声を上げる。 「刃は入らなかったか。意外と粘る」 「お、まえ!」 続いて繰り出される、すくい上げるような攻撃を避けつつ、俺は喉から声を絞り出す。 身長差があるためか、相手の攻撃はどうしても上を狙う物が多くなるようだった。 「何のつもりだ!一体何を考えて、こんな!?」 「家族を、守る」 鎌使いは、やはり芝居気のある口調でそう吐いた。 「兄が妹のためにすることなど、決まっているだろう?」 「冗談も大概にしろ!」 足払いをかけるような攻撃を避けつつ、俺は言う。 大体、妹など……! 「貴様は、あまりに普通すぎる。一般常識を逸脱しきれていない貴様の性質は、緋月家のような異常者集団にとっては不協和音なのだよ」 「訳の分からないことを!」 「イレギュラーの集団である緋月の家には、貴様こそがむしろイレギュラー。貴様はいつか、いつか貴様の『正義』に基づいて緋月を拒絶する、傷つける」 芝居がかった口調で長台詞を発しながらも、鎌使いは次々に鎌を突きあげる。 「妹が傷つく前に、その芽を摘むことは、兄の務めだとは思わないか?」 「不確定な未来への悲観と思い込みに基づいて動いているってのかい?ソイツは確かに三日の兄貴らしい設定ではあるね!」 攻撃を避けながら、俺は今まで相手に対して発したのことの無い皮肉を言う。 「ならば問うが。貴様、あの娘を、三日を確実に幸せにできるとでも?」 「!?」 振りあげられた鎌が、俺の鼻先をかすめた。 その大仰な動作と共に、相手の袖が微かに捲れ上がり、一瞬その腕が―――その素肌が露わになった。 露わになり、見えた。 990 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 46 18 ID 1Tyg1Pd. 「緋月三日は貴様に懸想した。だが、それは本当に貴様である必要があったのか?」 「何を言って、るんだ!?」 内心の動揺を抑え、振り下ろされた鎌を、俺はギリギリで避ける。 「八方美人の嘘吐き、その癖口より先に手が出る乱暴者。その上執着心が強い。まるで子供だな!」 こちらは避けるだけで精一杯だと言うのに、相手の攻撃は言葉を重ねるほどにむしろ苛烈さを増していく。 まるで、刃の中にゾッとするほどの負の感情が乗っているかのようだった。 「そんな貴様が、一度として誰かを愛することに成功したか!?誰かと共にあることに成功したか!?誰かを幸せにすることに―――成功したか!?」 月光を反射して輝く刃が、言葉と共に俺を襲う。 胸が、締め付けられるように痛くなる。 「巡り合わせ次第では、貴様では無い誰かに惚れ込んでいた。貴様よりも美しい心根を持った、三日を幸せに出来る誰かに」 俺は、その言葉に何も言い返すことができない。 事実、だからだ。 三日が俺のことを好きになってくれたのは、1年の時、『偶然』学校内を迷ったところを、『偶然』俺と出会い、案内したから。 けれど、そんなことは俺で無くても出来たことだった。 校内を知る者なら、同級でも、先輩でも、先生でも。 誰にでもできる、当り前のこと。 それが、その時たまたま俺が居合わせたと言うだけのこと。 ならば、もし他の男がそこに居合わせたら……? それが、本当に三日に相応しい相手だったら……? 俺なんかでは無かったら……? 恋した相手を、誰よりも救いたかった相手を救えなかった、守れなかった俺なんか、では…… 「断言しよう。貴様は誰も幸せになど出来ない。幸せになることなど……許されない!!」 言葉と共に繰り出される、鋭い薙ぎ払い。 同時にコートの袖が捲れ、もう一度素肌が露わになる。 これでもかとばかりに、傷が刻まれた肌が。 攻撃はバックステップで避けられても、相手の言葉が、存在が、俺の胸に突き刺さる。 「うぇ・・・あ・・・?」 思った以上の動揺に、ステップでたたらを踏んで、無様に転ぶ。 「……ふ!」 その隙を見逃す鎌使いではなく、すぐに俺の眼前まで間合いを詰める。 「三日が貴様などに出会ったこと自体が不幸だ。妹の不幸を是正するために、妹の幸せのために、今ここで全てを―――失え」 そう言って、項垂れる俺の頭上に、鎌使いは刃を振りあげた。 「…千里くん!」 しかし振り下ろされることは無かった。 聞き慣れたその声が俺の耳に飛び込んできた瞬間、鎌使いの姿が消えていたから。 残酷なまでに正しい、鎌使いの姿は、もういなかった。 振り向くと、三日が黒髪を振り乱し、こちらに駆け寄ってきていた。 どうやら、俺は三日に救われたらしい。 救わさせてしまった、らしい。 「…千里くん、千里くん!」 彼女の黒髪が、白い肌が、街灯に反射して美しく映える。 ああ、綺麗だな。 本当に、綺麗な女の子だ。 そう、純粋に思った。 「…い、いきなりいなくなるから何事かと思って。…何か、さっきよりボロボロですし。…でも、無事で……」 俺に抱きついて、切れ切れに言葉を紡ぐ三日。 じんわりと服が濡れるのを感じる。 泣いてる。 俺の為に、三日は泣いている。 俺の所為で、三日が泣いている。 彼女を安心させるために、その美しい髪を撫でようとした時、 ―――それは本当に貴様である必要があったのか?――― 鎌使いの言葉が思いだされた。 まったく、お前はいつだって正しいな。 「…せんり、くん?」 俺は、手を降ろした。 「ゴメンね、三日」 ぼんやりと、夜空を見上げながら俺は言った。 思えば、何度となく三日は俺のことを救っている。 思えば、何度となく三日は俺の為に泣いている。 でも、もういいだろう。 「でも、もう泣かなくていいから」 「…え?」 三日が小さく呟く声が聞こえる。 「もう、いいから」 もういい。 もういいよ。 もう俺の為に泣いたり怒ったりしなくていい。 俺の所為で感情をざわめかせなくていい。 だから、 「もう、俺のこと何も無かったことにしていいから」 ―――それは、月の無い夜のことだった。 991 :ヤンデレの娘さん 動揺の巻 ◆yepl2GEIow:2012/03/12(月) 00 47 04 ID 1Tyg1Pd. おまけ 武器解説 名称:無月 全長:30cm(最短時)→180cm(最大時) 製作者:緋月天海 所有者:緋月水星→緋月月日→緋月一日→??? 解説:緋月家で『最も真っ当に変わり者』と評される武器職人、緋月天海が制作した武器の1つ。 緋月天海の制作物の例にもれず、機能性よりも特異なギミックを仕込むことが重視されている。 伸縮させることで、30cmほどの短棒から、小ぶりのブレードが設置された大鎌に変形させることが出来る。 ブレードは長さ、切れ味共に今一つだが、強力な電極が仕込まれていることが特徴。この奇構により、相手は擬似的な記憶喪失を引き起こす可能性がある。 この奇構は、初代所有者であり、制作依頼者である緋月水星が『相手の記憶も命も狩り取りたい』と言う注文を付けた為。但し、この記憶喪失の度合いは全く予測不可能であり、緋月水星の望みがかなられたかどうかは不明である。 後に、緋月水星の兄である緋月月日、更に息子の緋月一日に渡されていることまでが確認されている。
https://w.atwiki.jp/fezgimel/pages/152.html
キャラクター名 ヤンデレ将軍 Pスキル ☆☆☆☆☆ 厨房度 ☆☆☆☆☆ 所属国 カセドリア 所属部隊 不明 タグ カセ キャラ 戦闘スタイル 名言・逸話 総評 こいつ・・・動くぞ! -- 淫乱テディベア (2009-09-20 10 52 05) これ気持ち悪いんだが -- 名無しさん (2009-10-17 21 55 15) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2322.html
217 : ヤンデレの娘さん 転外 とすと ◆3hOWRho8lI:2011/07/12(火) 23 37 40 ID tot03qBY バーに入った時、私は必ず最初の一杯は必ず二人分のお酒を頼むようにしている。 それは、私が単に大酒のみだからとかそういう理由だけでなく。 ただ、この場にはいない、いや、もうこの世にはいない人に捧げたいからだ。 いや、捧げたいというと仰々しいだろう。 この世にはいないあの人と、一緒に飲みたい。 そんな、センチメンタルな感情に基づく行為だ。 お酒の楽しみなんて知らないままに亡くなった娘だしね。 とにかく、1人息子のセンがようやく『野犬』に襲われた傷が癒えて退院する前日、私は行きつけのバーでいつものように2つのグラスを頼んだ。 で、私は頼んだ2つのグラスをチン、と鳴らす。 「乾杯、千幸(チィ)ちゃん」 この世には無い、嫁の名を呟く。 独り言だ。 そんな風に、私こと御神万里がいつも通りのコトをしていると、この小さなバーに入って来る、これまた小さな影が見えた。 「お待たせ…万里ちゃん」 「はぁい、レイちゃん」 笑顔を浮かべる相手に、私もまた片手をあげて返す。 レイちゃんこと緋月零日ちゃんは、私の仕事の同僚、パートナーといったところだ。 彼女は役者、私がそのメイクアップを担当している。 何のかんので10年以上の付き合いだろうか。 息子の千里(セン)には手っ取り早くとっつきやすい、子供番組に出演している相手、とだけ説明しているが、実際の所レイちゃんは様々な芸名で様々な役柄を演じている。 芸名を取っ払ってその出演歴を見れば(もし見ることが出来れば、の話だが)、経歴も演技力も有名女優と言って差し支え無いのだが、レイちゃんは本名を公表しようとしない。 以前の役のイメージが付いて回るのを嫌っていることもあるし(もっとも、レイちゃんの演じた役を見て、それが全て彼女と同一人物であると見破るのは難しい。)、役者には珍しく名誉欲という物がないからということもある。 いや、あらゆる意味でのしがらみというものを嫌っている、拒絶していると言うべきだろう。 彼女は夫婦関係を至上とする人だ。それ以外は時として邪魔になる。 そんなことを理解したのも、極々最近の話。 そんなレイちゃんが、私と対面に座る。 「レイちゃん、何か飲む?」 「んー…ブラッディ・メアリーで!」 こうやって元気に返事をしている姿だけをみると、健康健全な若い女の子にしか見えないのだが。 「お客さん、ウチは未成年にお酒は……」 少女にしか見えない外見のレイちゃんに難色を示すバーの店長さん。 「成人…だよ」 それに対して、レイちゃんはヒラヒラと運転免許証を示す。 「……失礼しました」 運転免許証を確認し、店長さんはお酒の準備に入る。 「こーゆー時は面倒だよ…ね。バーに居てサマになる万里ちゃんが羨ましいよ…ちょっとだけ」 「あら、ちょっとだけ?」 「そう…ちょっとだけー」 そう言ってかりゃかりゃと笑うレイちゃん。 この会話を第三者が見たらどう思うのだろう。 仲の良い友人同士の会話に見えてくれれば良いのだけれど。 実際はともかくとして。 「それにしても珍しい…かな。万里ちゃんから飲みに誘ってくるなんて…ね」 「レイちゃんこそ」 私は撮影の打ち上げ等にこそ参加するが(大抵はフォロー役や幹事の手伝いだ)、確かに誰かと一対一でお酒を飲むのは珍しいかもしれない。 どちらかと言えば、1人酒の方が気楽でいいと考えるタイプ。 一方、レイちゃんはあまりお酒自体飲まない方で、飲んだとしても軽いお酒がメインだ。 そんなにお酒を勧めたくなるようなルックスでも無いしね。 218 : ヤンデレの娘さん 転外 とすと ◆3hOWRho8lI:2011/07/12(火) 23 38 23 ID tot03qBY 「私もまぁ、1人で飲むのが寂しくなることもあるってコト。レイちゃんとも、今じゃ全く仕事だけの関係ってワケでも無いしね」 「そうそう。まさか私の三日ちゃんが、万里ちゃんの子供を好きになる…なんてね」 そう、私の息子であるセンと、レイちゃんの娘さんの三日ちゃんは現在恋人同士の関係にある。 「さすがにアレは世間の狭さを感じたわね」 「驚い…た?」 「ええ、驚いたわ」 一応、レイちゃんの娘さんが息子と同じ学校に通っていたことは知っていた。 しかし、まさか彼女がある日ドアを開けたら立っていたのは驚いた。(ピッキングまがいのことを試みていたようにも見えたが気のせいだろう) 聞けば息子の彼女と言うではないか。 あの子も、もうそんな歳かと思ったものだ。 「でも良い娘じゃない。ちょっと人見知りだけど、礼儀正しいし、気立ても優しいし」 「フフ…そう言われると嬉しいね」 「自分が誉められてるみたいで?」 冗談めかして、私はレイちゃんに言ってみる。 「私を誉めてるんだよ…実際。あの娘は『私の続き』…なんだから」 『私の続き』、というのはレイちゃんが時折使う三日ちゃんへの呼び方だ。 それだけ、親の性質を受け継いだ娘だということなのだろうが。 そうした枠に子供を当てはめてしまうのはどうなのだろう。 いや、私もそうしたことを言えるほど立派な親ではないか。 「子供と言えば、この間万里ちゃんの息子に会った…よ」 「私に似ず、良い子だったでしょ」 「いいえ、万里ちゃんそっくりな…良い子だったよ」 「あら。じゃあお姑さんとしては、合格?」 「まぁ、及第点…ってところ?」 「センもホッとしたでしょうね」 私は笑いながら答えた。 「元気してる…あの子?」 「元気とは言い難いわね。現在絶賛入院中。明日やっと退院だけど」 「ああ、そう言えば…聞いたね。野犬に襲われたん…だって?」 ごく普通に、いけしゃあしゃあとレイちゃんは言った。 「そうそう。とても黒い、とても可愛らしい野犬だったそうよ」 これは嘘だ。 センはこんなことを言っていない。 何も言わないのなら、何も聞かないのが私のスタンスだ。 今回ばかりは、そのスタンスを少しだけ変更させてもらうが。 「ふう…ん」 しかし、レイちゃんは普通のリアクション。 まぁ、ある程度は予想していたけど。 一見感情豊かに見えて、基本的に冷静な子だし。 一方で、怒る時は烈火のごとしだが、そんなことは滅多に無い。 時折、感情そのものがアンバランスに見えるくらい。 あるいは―――狂気的とも見えるくらい。 そんなことを考えていると、バーテンダーが注文したお酒を置いて、離れて行く。 この位置なら、もう何を話しても誰にも聞こえないだろう。 「腹の探り合いは無意味、か」 「私も、はっきり言ってくれた方が助かる…かな」 互いに、大きく伸びをする。 「ねぇ、レイちゃん。もしかしたら勘違いだったらごめんなさいなんだけどね、」 「何かな…万里ちゃん。ハッキリ言って良い…よ」 「じゃ、お言葉に甘えて」 そして私ははっきりと言う。 「私の大事な子供を襲ったその『野犬』―――もしかして、レイちゃんだったんじゃないの?」 219 : ヤンデレの娘さん 転外 とすと ◆3hOWRho8lI:2011/07/12(火) 23 39 23 ID tot03qBY それに対して、レイちゃんは、 「うん…そうだよ」 と、あっさりと言った。 「どうしてそんなことを……って聞くのはそんなに意味が無いかしら」 「かも…ね。万里ちゃんは私の良いメイクさんではあるけれど、私の良き理解者…って訳じゃないし」 「そうなることを、望んでもい無いくせに」 「そう…だね。私が私のことを理解して欲しいのは、私の愛する人ただ一人…だから」 だから、私はどれ程時を重ねても、きっと彼女のことを理解することは無いだろう。 どれ程、そう願ったとしても。 他者と断絶した彼女の心を、私はただ『狂気』と評することしかできない。 それは、とても悲しいことだけど。 「そんな顔をしないでよ…万里ちゃん。あなたは、あなたの大切な人のことだけ考えてれば…いい」 「それだけでどうにか出来れば、世の中苦労はしないわよ」 「そんなこと言ってると、天国の奥さんに『旦那さんが浮気してる』…って言っちゃうよ」 「あなたはいつからイタコになったのよ。あと、嘘教えないで。私はもう恋愛しない主義」 実際、私は嫁が死んで以来、恋愛をしたことがない。 「一途…なんだ」 「そんなんじゃないわよ。ただ、何て言うか、萎えちゃってね」 確かに、嫁がこの場に居れば「私を忘れて他の女を愛するなんて許さない」とは言いそうではあるが。 正直、一途とかではなく、とても他の人と恋愛なんてする気にはなれないのだ。 あの娘の――― 千幸(チィ)ちゃんの存在があまりに鮮烈で。 「奥さんが亡くなってから、随分長い間お仕事に逃げ込んでたもの…ね」 そんな私の内面を見透かしたように、レイちゃんが言う。 そちらの内面は見たくても見せてくれない癖に。 しかし、痛いところを突いてくる。 彼女の言うように、私は嫁が死んでから長いこと仕事に打ち込むことでその悲しみを忘れようとした。 「あなたの言う通りよ。そのせいで、息子には随分寂しい思いをさせてしまったわ。させすぎてしまった」 お陰で、息子とマトモな関係を構築するのに随分回り道してしまったのはまた別の話。 「だからこそ、あの子にはこの先もっと幸せになって欲しい。そうなる権利がある。だから―――」 スッと相手を見据え、続ける。 「もしあなたが、息子の幸せを邪魔するなら―――俺は絶対に許さない」 怒気さえきかせたその言葉に、レイちゃんは無反応。 この人に何を言ったところで、何をしたところで、その心に響くことは無いのかもしれない。 「んー…わかった。わかって…ます。元々、追撃の予定は無かったし…ね」 「暴力だけに限らず、の話。アナタ言葉責めも得意じゃない」 「了解…かな。そうすることは、多分もう私に何のメリットも無い…し」 本当に、彼女の心に響いていない。 ささやかな失望と、寂しさを覚える。 何のかんので10年以上の付き合いだと言うのに、だ。 「それに、私も別段子供に不幸になって欲しいって思ってる…なんて訳じゃないし」 「あら?」 それは、少し意外だった。 自分の旦那以外なんてどうでもいいと思っていそうなものなのに。 「本当…だよ。三日ちゃんも二日ちゃんも、どこでどうしてるか知らないけど一日(カズ)くんも、できることなら不幸になって欲しく無い。だって―――」 「あなた達が愛した証、だから?」 私がそう引き継ぐと、本気で驚いた顔をされた。 「どうして…理解(わか)ったの?」 「なんとなく、ね。ジッサイ、子供って自分が死んでも自分がいたことを証明してくれるし」 「それは、万里ちゃんの考え?」 「一般論、よ」 自分の考えとするのには、自分の考えとして引き継ぐのには、それはあまりにも重すぎる。 色々と、思うところはあるし、それ相応の経緯もあるのだが、まぁそこまで話すことは無いだろう。 「何にせよ、万里ちゃんが私と同じような考えしてたのは、少し不思議な気分…かな」 「不思議な気分、ね」 「そう、気持ち悪いとは思わないけど、さりとて嬉しいと言うほどでも…ない。不思議な…気分」 私としては嬉しく思って欲しかった気もする。 先ほどは物騒なことも言ったが、やはりレイちゃんとは良い関係を築きたいのだから。 友達で、ありたいのだから。 叶わぬ望みかもしれないけれど。 「まぁ、重い話はこれくらいにして飲みましょうか」 「そう…だね」 そう言って、互いのグラスを掲げた。 220 : ヤンデレの娘さん 転外 とすと ◆3hOWRho8lI:2011/07/12(火) 23 39 48 ID tot03qBY きっと、私たちの関係はこのグラスと同じなのだろう。 完全に分かりあうことは無いけれど、ただ一点だけ、ただ一瞬だけは繋がることが出来る。 乾杯の瞬間に触れ合うこのグラスのように。 それが希望なのか絶望なのかは分からないけれど。 「私たちの…愛と」 レイちゃんの言葉を、 「それに続く子供たちの幸せに」 私が引き継ぎ、 「「乾杯(トスト)!」」 2人の声が唱和し、チン、と一瞬だけグラスがぶつかり合った。
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/146.html
ヤンデレ攻撃隊 2黒 クリーチャー・人間・ミニオン エコー 2黒 側面攻撃、側面攻撃、側面攻撃 ヤンデレ攻撃隊がいずれかの対戦相手に戦闘ダメージを与えるたび、 そのプレイヤーは毒カウンターを1つ得る。 1/1 ヤンデレシリーズのひとつ。どんだけ側面に執着しているのだろうか。 攻撃時には本家の《アルビノ・トロール》やこちらのギコ教授を一方的に殴り倒すことができる。 ただし、根本的に1/1であるため簡単に焼かれてしまう上、側面攻撃が攻撃時にしか誘発しないことから、ブロッカーとしては使えない。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2340.html
472 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 03 58 ID 2AmFjdJU それは、3年と幾らか前のこと。 「へぇーん」 夜照学園中等部、第二校舎屋上に上がった俺(とてもそうは見えないが当然中学生)に、そう声がかけられた。 時刻は昼休み。 教室にもどこにも居場所が無かった俺は、とりあえずの身の置き場所を探してこの場所に辿りついた。 「わざわざ好き好んでこんな場所に来るのがいるとはねー。よっぽどの物好きー?」 そう言ったのは、スラリとした体つきの女生徒だった。 艶やかな、セミロングの黒髪。 中等部の冬服に黒タイツ。 糸のように細めて笑う姿は、まるで美しい狐のようだった。 「しかも立ち入り禁止のこの場所。ひょっとして、キミ不良さん?じゃぱにーずばんちょーってやつー?」 クルクル舞いながら、クスクス笑う少女。 「違う」 と、俺は答えた。 「人のいない場所を探していたら、ここに辿りついた。それだけ」 「ふいーん」 と、俺の言葉に分かっているのかいないのか分からない少女。 「奇遇だね」 「なぜ」 「ボクも、同じだから」 飄々とした少女の態度からは思いもよらぬ言葉に、俺は驚いた。 「信じられないって顔してるね。いや、マジマジ。小うるさい教室からここに――――逃げてきた。人のいない、ここに」 「……」 無言の俺に、少女は改めて向き直った。 「ひょっとしたら、ボクとキミは同類なのかもしれないねー」 と、もう一度笑う。 くすくすと。 屈屈と。 「ねー。名前を教えてよ、同類」 至近距離からこちらを見上げ、少女は言った。 「御神千里」 俺は問われるままに答えた。 「そう」 ニィ、と笑みを深くする少女。 「ボクは九重かなえ。よろしく、千里」 その日から、俺と九重かなえの、互いの互いの傷を舐め合うような、互いの流血を舐め合うような緋色の関係が始まった。 473 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 05 44 ID 2AmFjdJU そして、約3年後の現在 夜照学園高等部にて 「第1回 御神千里の恥ずかしい過去大暴露大会!いえーい!」 新学期が始まり、始業式が終わったその日のこと。 一原先輩に「手伝って欲しいことがある」と言われて呼び出された夜照学園高等部生徒会室。 そこで、俺は上記のような阿呆な音頭に迎えられた。 「と、ゆー訳でやっと来たわね、今回の主役」 「……い、ち、は、ら、せ、ん、ぱ、い?」 じっとりした目で相手を見てやる。 この野郎、手伝って欲しいことってこれかい。 って言うか何をしろってのか。 「まぁまぁ、取り合えず座って。御神ちゃんは今回の主役と言うかオモチャと言うかそんな感じだから」 「オモチャって何ですか」 ツッコミを入れながらも席に着く俺。 普段はコの字型に組み合わされているであろう長椅子は、今はT字型に組み合わせられていた。 Tの横棒の方の長椅子の後ろにはホワイトボードがあり、『大暴露大会!』という頭の悪い名前がでかでかと書いてあった。 誰だ、こんな自分の頭の悪さをアピールしまくってる名前考えた奴。 「私はお姉や副会長さんと違って、中等部のコトは知らないからドキがムネムネだよ!」 「そう言えば、妹殿は中学は他所でござったか」 「確か、私立の天川中だっけ?李はその頃まだ海外だよね」 「…ついにこの日がやって参りましたね」 そう言うのは、生徒会役員で一原先輩の妹の愛華さん、同学年の李忍、霧崎涼子。 それに加えて、緋月三日。 緋月三日 大事なことなので(以下省略) 「何でお前がここにいるのぉ!?」 「わひゃぁ!?」 思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。 三日の悲鳴が無駄に可愛かったがそれはさておき。 「いや三日さん!?俺確かあーたに『生徒会には近づくなよ!絶対近づくなよ!』と言いまくってましたよねぇ!?」 肩を掴んでがっくんがっくんと詰め寄る俺。 「やめて御神ちゃん!全部私が悪いの!私があなたの過去話を餌にして三日ちゃんをここにおびき寄せたから!」 「いかにも悲劇のヒロイン口調だけどやってることは悪党だよなぁ!」 目に涙を浮かべてそうな顔の(あくまで『そうな』)一原先輩にツッコミを入れる。 どうやら全ての元凶はこの人らしい。 「…あ、いや、実は私の方からお願いしたんですけど」 「惑わされるな!それが奴の手口だ!」 申し訳なさそうな三日を俺は全力で説得する。 「何か、ン年来の付き合いの後輩にラスボスか何かみたいな扱いを受けてるんだけど、私」 「いや、アンタがこの話のラスボスなんじゃないかと最近本気で思うんですけど……」 「残念ながらソレは無いわよ。確かに、『敵は生徒会の美少女軍団!』って言うのは華があるけど」 そう言ってから、一原先輩は全員を見回して、 「いっそのこと皆でやる、ラスボス?『三日ちゃんを返して欲しければこの生徒会四天王を倒していくことだな!』みたいな」 「「「「「「「いやいやいやいや」」」」」」 周りのほぼ全員から否定される一原先輩。 華のある無しでラスボスにならないで欲しい。 って言うかドサクサにまぎれて三日を攫わないで欲しい。 大体、これはどう言う展開なんだろう。 474 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 06 24 ID 2AmFjdJU 「とどのつまり、中等部時代の昔話に華を咲かせましょう、という企画なんですけどね」 淡々と答えるのは、副会長の氷室先輩。 この人とも付き合いは長いけど、凶器での突き合いの方が多かった気がする。 思い出したくもない思い出だった。 「それが、何で三日たちまで?」 「…私たちは、中等部時代の千里くんたちを知りませんから」 「同じく」 三日に加え李や霧崎、愛華さんも頷く。 「ユリコたちは最近study hardにwork hardデシタから、コレくらいの息抜きがヒツヨーデス」 生徒会の顧問であるエリス・リーランド先生も賛同しているらしい。 しっかし、スタディーハードにワークハードって、先輩がハードワークってねぇ……。 「うっわ、疑いの目で見られた」 「日ごろの行いですよ」 不服そうな先輩だけど、こればかりは仕方ないと思う。 「会長も私も、これでも夏休みの間受験勉強のために邁進していましたからね」 と、氷室先輩が言うので意外にも真実らしい。 「まー、私は受験においても頂点に立つ女だからね!」 エヘンと胸を張る一原先輩。 「志望校を考えれば、まだまだ足りない位ですけどね」 「雨氷(うー)ちゃんキビシー」 そう言えば、先輩たちはどこの大学を狙ってるのだろう。 雨氷先輩は学内でもかなり成績上位者で、一原先輩の成績は―――ムラがある。 期末試験で一位を取る時もあれば、掲示板の上位者発表に名前が載らないと気もある。 そう思って聞いてみると。 「「東大」」 と2人から即座に答えが返ってきた。 「東大って……東北の大学全般とかそーゆーオチじゃないんですよね?」 あまりにあっさり言ったので、俺は聞き返した。 「さすがにそこでネタに走らないわよ」 「私や会長の成績なら、困難ではあっても全く実現不可能と言う程ではありません」 「まぁ、そうかもですけど意外ですね。氷室先輩ならともかく、一原先輩が学歴とかちゃんと考えてるなんて」 「御神ちゃん、私のこと何だと思ってるのよ……。まぁ、それはともかく、思うところがあってね」 「思うところですか?」 「そう、この一原百合子には『夢』がある!」 と、背景に『ドドドドド!』と言う擬音が欲しいポーズで先輩が言った。 「将来この国を、ノーテンキラキラに笑って暮らせる良い国作ろう鎌倉幕府にすること!」 「おお!」 発言は頭悪いし具体性は欠片もないが、言ってることは非常に立派だ! 「そしてぇ!私はそのトップで誰よりもノーテンキラキラな極上幸せ生活をエンジョイするのよ!」 「おい」 結局は私欲かよ。 「Oh,ユリコ。Youのユメはいつ聞いても素晴らしいデス」 横でエリス先生がハンカチ片手に感涙していた。 それで良いのか教育者。 「myselfをハッピーに出来ないヒトがyourselfをハッピーにはデキマセン」 そこを突っ込むと、至極真っ当な言葉が返ってきた。 確かにそうかもしれない。 ただ、一原先輩の日ごろの行いを見てるとストレートに尊敬できないんだよなぁ……。 女の子ばっか追いかけてる人、というイメージが強すぎて。 「まぁまぁ。私らのことはともかく、御神ちゃんも座って座って。お弁当持ってきてるでしょ。それも広げてさ」 と言う先輩の言葉に、俺は流されるままに席に付き、隣の三日にお弁当箱を渡す。 勿論自分のも取り出しいただきます。 他の面子もめいめい弁当を取り出していた。 「あ、このお菓子は適当に摘まんでねー」 と、一原先輩たちが市販のポテトチップスやチョコレートも広げる。 ジュースまで用意され、ちょっとしたパーティーみたいだ。 475 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 07 23 ID 2AmFjdJU 「しっかし中等部時代ですか。そんな面白いネタがあるとも……」 「はいはーい!一番、一原百合子行っきまーす!!」 俺の言葉を無視して挙手する一原先輩。 「どうぞ」 進行役なのか、氷室先輩がそう言うと、一原先輩は立ち上がり、キメ顔を作る。 「俺は、自分の目で見た物しか信じない」 いかにも男声を作ってますよ、という声音だった。 「だから、俺は心とか友情とか信じません。目に、見えませんから」 フッ、と言いたげな仕草をする先輩。 って言うかコレって…… 「以上、御神ちゃんが初対面でかましてくれたイタい台詞でしたー!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 覚えてたのか! そんなつまんない台詞覚えてたのか! いや、実際言ったけど忘れていて欲しかった! 「…千里くん、そんな深遠な哲学をお持ちだったのですね」 「いっや深遠じゃないから!って言うか今すぐ忘れて!」 「嫌です!」 「こんなとこだけ即答ですかー!」 三日にだけは知られたくない、イタい過去だった。 「まぁ、御神ちゃんにも中二病を発症していた過去があったということで!」 人のトラウマスイッチを押しまくった女が、イイ笑顔でそう言った。 「…すごい。…あの千里くんが見事なまでに玩具にされています」 妙な所に関心する三日。 「二番手は私ですね」 俺の心理的ダメージをスルーして、氷室先輩が立ちあがる。 「こういう場合、公平に私の恥ずかしい過去も暴露しておくべきでしょう」 いや、その理屈はおかしい。 「当初、私は御神後輩が会長に懸想している物と勘違いしていました」 「それは恥ずかしい勘違いだね!」 氷室先輩の心を笑顔で抉る愛華さん。 「・・・何で千里くんまで渋い顔をしているんです?」 「いや、その勘違いのお陰で随分な目に合ったからさ」 その勘違いのお陰でナイフで刺されかかったり、そうした勘違いをした他所の女の子を守るためにスタンガン突きつけられたりね。 実のところ、一原先輩を尊敬する先輩として(一瞬だけ)見たことはあっても、それが好意に発展したことは無い。 「半分以上はあなたのせいでしょう」 「いやその理屈はおかしい」 自分が悪いとはかけらも思っていない氷室先輩だった。 「・・・ひょっとして、千里くんの危機順応力ってその頃に身についていたりします?」 「だね、氷室先輩とやりあったお陰で縄抜けやら護身の術やら見に付いちゃいましたよ」 「ある意味、御神後輩は私が育てたといって過言ではありませんね」 「自分の悪事を省みない発言どうもありがとうございます、氷室先輩」 「私は神に誓って過去一切罪を犯していません」 堂々と言いやがった、氷室先輩(このおんな)。 「御神ちゃんはいつでも女の子のために奮闘してたわよねー」 そのやり取りを横から見ていた一原先輩が笑いながら言った。 「・・・なん・・・ですと・・・」 先輩の言葉に、どこぞのバトル漫画のように驚愕する三日。 「いやね、うーちゃんの時もそうだけど、御神ちゃんって何かと女の子に力を貸すことが多くってさー」 「その女の名前を全て教えてください!いえ教えなさい!」 一原先輩に対してすごい剣幕で詰め寄る三日。 「ちょっと待てい、それを聞いてどうするつもりだ」 それを押さえる俺。 「その時のイベントの結果、千里くんとフラグが立っていたら皆殺します!」 「殺すなよ。っ言うか立ってないし」 「・・・立たないんですか?」 「現実とゲームを一緒にするな」 きょとんとする三日に、俺は嘆息しながら答えた。 「・・・そうは言っても、千里くんって女の子にモテる方ですよね、実のところ」 「酷い誤解だ」 三日も葉山と同じ種類の誤解をしていたらしい。 「そーいえば、御神ちゃんが女の子とお付き合いしたって話聞かなかったわね」 「ええ、私の知る限り、緋月三日後輩が初めてです」 一原先輩と氷室先輩がウラを取ってくれる。 「・・・でも、どうしてでしょう?千里くんのような素晴らしくて優しい人なら、河合後輩のように下手な女がコロリと参ってしまいそうなものですが」 三日のその純粋な言葉に、背景で吹く一原先輩と氷室先輩。 「しょ、正直御神ちゃんの中二病時代知ってるから・・・・・・・」 「て、手放しで褒められると、お腹が痛・・・・・・」 「お前らあああああああああああああああああ!!」 俺を何だと思ってるんだろう、コイツらは。 先輩でなかったらブン殴ってるところだ。 476 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 09 07 ID 2AmFjdJU 「学級の中でも、女友達はいても恋愛関係に発展しそうな件は稀でござったな」 と、冷静に分析するのは、実は現在同じクラスだったりする李だ。 俺と話したことは多くない筈だが、良くクラスを見ているようだ。 「所謂、いい人止まりってヤツ?」 どこかからかうように霧崎が言った。 「ま、そんなところー。今まで積極的にカノジョとか作ってなかったのもあるけどね」 「そこいらは、割ときっちり距離取るタイプよね、御神ちゃん」 合点するように言う一原先輩だけど、残念ながらハズレ。 「んー、何て言うか友達の距離感と恋人の距離感とかって良く判んないんですよね。近づきすぎたらウザいですし」 「あー、確かにそれはウザい」 一原先輩はナチュラルに同意するが、周囲の生徒会メンバーが一様に目を逸らすのは何故だろう。 「・・・距離感、ですか」 神妙な顔をする三日。 「あー三日は気にしないでいいよ。三日みたくそっちからザクザク入ってこられると逆に助かるしー」 「・・・ありがとうございます。…って、え、あれ?…ザク…ざ、く?」 俺の言葉に礼を言ってから不思議そうな顔をするけれど、不思議に思う要素がどこにあっただろうか。 三日ほどこちらの距離に近づいてくる相手は無いと思うのだが。 「まー、御神ちゃんも恋人にすると死ぬほどメンドいタイプよね」 「失礼な」 「勝手に三日ちゃんのお弁当を作ってきたり」 「ウグ」 いきなり反論できなくなった。 「そういう風にイロイロやって、相手がウザがると『こんなに尽くしてきたのに!』って思っちゃうタイプ」 「あう・・・・・・」 否定できない。 表に出すかはともかく、そういう『努力に見合わない結果』って言うのはかなりキツい。 「・・・九重かなえのときも、そんな感じだったんですか?」 「かなえちゃんのとき?」 不思議そうにそう言って、こちらの方をジト目で見る一原先輩。 「なぁに、御神ちゃん。三日ちゃんに昔の女の話をしたわけ?デリカシー無いわねぇ」 「誤解を与えるような言い方しないで下さい。他所で話しているのを偶然聞かせちゃったんですよ」 と、俺は先輩に説明した。 「・・・昔の女、やっぱり・・・」 ゴゴゴゴゴゴゴ、と横で黒いオーラを纏い始める三日。 もう1人、誤解を解くべき人間がいるようだ。 「落ち着いて、三日。俺と九重がそういう関係だったことは一瞬たりとも無かったから」 「むしろ、御神ちゃんの片思いだったもんねぇ」 「そうですね」 うんうんと頷く一原先輩と氷室先輩。 「あなた方・・・・・・」 と、俺がジト目で見てやると、 「うん、気づいてた」 「ある程度あなたの性格を掴んだらすぐ判りました」 あっさりという先輩コンビ。 ちなみに、当時2人はそんな素振りかけらも見せていませんでした。 「・・・カタオモイッテ、ドンナカンジデシタカ?」 うっわ、三日の声から感情が消えうせてる。 ついでに黒いオーラの濃度が増してる。 「何て言うか、御神ちゃんの姿は見てて居た堪れないというか痛々しいというか」 「・・・タトエバ?」 「いつも一緒にいたと言うか」 「いつも九重後輩についていったと言うか」 抑揚の無い三日の言葉に、一原先輩と氷室先輩は言った。 「あー、よく屋上で添い寝とかしてたわよね、2人して」 「誤解を招くような言い方をするな」 一原先輩の言葉に抗議する。 『添い寝』という言葉から連想されるような嬉し恥ずかしな展開は全然全く悲しいくらいに無かったので念のため。 「・・・ソレカラ?」 「親切をすると、」 「スルーされる」 「勇気を出した遠まわしな口説き文句は」 「いなされる」 「熱い視線を向けると」 「目をそらされる」 「最後の手段、愛情こめたお弁当は、」 「『まー、フツー?』」 「「って感じ」」 夫婦漫才のようなテンポで説明した先輩コンビの言葉に、三日の大切な何かがブチンと切れた。 477 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 11 15 ID 2AmFjdJU 「ムギャー!」 ハサミ、カッターナイフ、十得ナイフ、ダガーナイフ、伸縮式警棒、ワイヤー、アイスピック、妙なスプレー、スプーン、包丁、お玉etcetc 凶器という凶器を雨のように周囲にブチまける! って言うかどこに隠してたんだそんなモン!? 「うわぁ!」 ソレに対して思わず距離をとり、物陰に隠れる一同。 「ココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエエエエエエ!」 ついでに、どこからともなく大鉈を取り出し、めちゃくちゃに振り回す! 「ちょっとどうしてこんなことになっちゃうのよ!?」 「こうならない方がおかしいでしょうが!」 暴風のごとき三日の狂行を避けながら、俺は一原先輩にツッコミを入れる。 「なんだか知りませんが、こうなったらころしてでもとめるしか―――」 「俺に任せてください!」 物騒な行いに出ようとした氷室先輩たちに先んじて、俺は三日の方に向かう。 振り回す手が広がったときを見計らってソレを掴むようにタックル。 そのまま床の上に押し倒す。 「三日、三日、落ち着いて。大丈夫だから」 「ココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエ」 「アイツは、九重は過去のこと。もう終わったことだから。それに、多分俺はアイツと一緒になっても幸せになれなかった!」 「ココノエカナエココノエカナエココノエカナエココノエカナエアアアアアアアアアアアアアアアア!」 「俺は!お前といてこれでもそこそこ―――幸せだ!」 言った。 言っちまった。 こんな大勢の前で。 恥ずかしい。 死ぬほど恥ずかしい。 けれども。 俺の言葉に三日は動きをピタリと止めた。 「・・・しあ、わせ?」 驚いた様子の三日に俺は無言で頷いた。 「・・・私といて、幸せですか?」 再度頷く。 実際、三日はいつも俺と寄り添ってくれようと、必死で、ひたむきで。 そうした姿勢に、ささやかながら救われない日なんて―――今まで1日たりとも無かった。 「・・・九重かなえと一緒にいるときよりも?」 「かも、ね。アイツといる時間の心地良さは、幸せとはベクトルが違ったから」 「…そうですか」 良かった、と三日は言った。 そして、俺たちは三日が暴れて散らかった生徒会室を片付けた。 そのことを三日と一緒に生徒会役員達に謝ることも忘れない。 三日はまだ落ち着いていないというか、不承不承といった感じだったが、一原先輩は笑って許してくれた。 それから、改めて暴露大会再開。 俺は、九重といた過去を、静かに説明し始めた。 478 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 12 07 ID 2AmFjdJU 「あの時、俺は友達がいなかったからなぁ。だから、同じく友達のいない奴がいるってのはそれだけで救われた」 「・・・いなかったんですか、お友達」 「だね。途中から葉山が気まぐれだか動物的感だかで絡んできたけど、それまでは一生に1人も。だからまぁ、九重が初めての友達って言ってもいいな」 「・・・私にとっての、朱里ちゃんみたいな、ですか」 「え、そうなのか?」 「・・・はい。入院生活が長くて、小学校はあまり通えなくて、中学でも、上手く人付き合いが出来なくて」 「それで、明石が」 「・・・はい」 「お前が会ったのが、明石で良かったかもな。タイプが違うから。俺と九重はベクトルが似すぎてた。誰とも心を通じ合えず、誰にも心を開かなかった」 「そうね!だからかなえちゃんに会ったときにビビッと分かったわ!この娘に必要なのは仲間だ、ってね!」 静かな会話を、一原先輩がブチ壊した。 「そんなきちんとした考えを持って、九重を生徒会に入れたんですか?」 「ああ、ゴメン。何も考えて無かったかも」 「だから、俺も生徒会に入ったんですよね。先輩から九重を守るために」 「もしかして気づいてた?私がかなえちゃんに惚れてたの」 「はい、何となく」 うん、昔っからこんな調子なんだよな、この人。 「お陰で、何度九重後輩を暗殺しにかかったか・・・・・・」 困ったように嘆息する氷室先輩だけど、明らかにあなたは加害者側です。 お陰で、何度九重を命の危機から切り抜けさせることになったか。 「・・・でも、何で千里くんはその九重という女に堕ちたんですか?・・・聞く限りでは随分嫌な嫌な嫌な人みたいですけど」 やれやれ、三日も随分耳の痛いところを突いてくる。 「そのときの俺も、嫌な嫌な嫌な奴だったからなー。『嫌な奴で良くない?』って言ってくれたのはアイツが初めてだったし」 「・・・千里くんを肯定してくれた人だったんですね」 「だね。アイツがいなければ、今の俺はなかった。そう胸を張って言える」 たとえ傷を舐めあうような関係だったとしても、その頃の俺には傷を舐めあうことが必要だったのだろう。 「ま、同類だからこそ九重は俺になびかなかったのかもなー。人は自分に無い物を求めるって言うし」 そもそも、九重はどう思っていたんだろう、俺のこと。 軽蔑?嘲笑?同族意識? 決して本心を明かさない女だったので、今となっては判らないが。 ここにあるのは、ただ俺のいて欲しいときに九重がいてくれた、という事実だけだ。 「・・・いな」 と、三日が呟いた。 「・・・悔しいな。・・・本当なら、そこには私が居たかったのに。その頃千里くんに会っていれば私がそこにいられたと断言できません」 それが、たまらなく悔しいのです、と三日は言った。 拳を強く握り締めて。 「今居てくれる。それだけで十分」 その拳を両手で包み込み、俺は笑った。 「俺だって、過去の弱っちい頃にお前と会っていて、お前と居られたかは分からないしさ」 俺の言葉に、コクンと頷く三日。 思えば、俺は三日のことを意外と知らない。 俺が弱かった頃、もしかしたら三日も弱かった頃だったのかもしれない。 比翼の鳥には、共に羽ばたくだけの強さが必要なのだ、両者共に。 「御神ちゃん、やっぱりビミョーに中二病残ってるわよねぇ」 「人の心を読まないで下さい」 当然のように茶々を入れた一原先輩に、俺はツッコミを入れた。 「それほりも、何か面白いネタ無いですかね?」 「んー、アレとかどう?御神ちゃんが恋のキューピッド役をやった話」 「アレも大概にして大変でしたけどね」 「…それ、興味深いですね」 「ゾクゾクするでしょ?」 こうして、賑やかな放課後がなんとか無事に過ぎて行った。 479 :ヤンデレの娘さん 暴露の巻 ◆3hOWRho8lI:2011/07/29(金) 21 12 33 ID 2AmFjdJU おまけ 「それでは、失礼しますね」 「…本日は、ありがとうございました」 その後、和気あいあいと思い出話に花を咲かせ、御神千里と緋月三日は生徒会室を去って行く。 「昔の俺、格好悪かったでしょ、三日」 「…いえ、むしろ千里くんは昔から千里くんだったんだなって分かって嬉しかったです」 「ソレ成長してないってこと?」 「わわ…違います違います」 「分かってるって」 そんな風に遠ざかって行くやり取りを、生徒会室で役員達は聞いていた。 ある者は笑いながら、ある者は苦笑しながら。 いずれにしても、何のかんのと言いながら、あの2人は似合いのカップルだ、と言うのが彼女らの総意だった。 緋月三日もそうだが、御神千里も大概にして相手に参っている。 「これでアナタの願いに叶えられましたかね、緋月先輩」 2人のやり取りが聞こえなくなった生徒会室で、一原百合子は呟いた。 「十分すぎるくらいでしょう」 と、氷室雨氷が百合子の紙コップにジュースを入れながら答えた。 「ありがと、うーちゃん」 雨氷に微笑みかける百合子。 その笑顔に、雨氷は目をそらす。 照れているのだ。 「しっかし、かなえちゃんかぁ」 紙コップに口を付けながら、百合子は言った。 飲んだジュースの味はするのに、思いはどうにも苦かった。 「やはり、思うところはありますか」 「まぁ、ね」 重いため息。 後輩達の前では見せなかった、暗い表情だ。 この辺りの気遣いを天然でやっているのだから恐れ入る、と雨氷はいつも思う。 「これまで、生徒会として、一個人として学園の誰かのために尽力していた貴女が―――」 「そう、私が唯一、そのヤミを」 「「救えなかった相手」」 百合子と雨氷の声が、重く、暗く、唱和した。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/63.html
904 :埋めネタ~ヤンデレ家族~ [sage] :2007/09/24(月) 23 07 02 ID 44vDg8Ym 俺の家には5人が同時に暮らしている。そして俺以外の4人全員が何かしらおかしい。 まず、父と母。実の両親である。 俺にとっては両親であるが、実を言うとこの2人はただの夫婦じゃない。 別に父親がヒーローだとか、母親が裏世界のドンだとかいう意味ではない。 もうちょっとレベルの低い意味でただの夫婦ではない。 別の言い方をするならばベクトルが違うとでも言うのだろうか。 俺の父と母は、兄妹だ。 嘘ではない。どうしようもなく、本当のことである。 なにせ、両親の母――俺にとっては祖母である――から聞かされた話だ。 祖母はまだ50代である。まだ呆けていない。会社にだって務めている。 俺自身、祖母の言ったことを全く疑っていない。 俺が、兄妹で子供を作ったというにわかには信じがたい話をなぜ疑わないかというと、 たった今、壁一枚隔てた向こう側から、それを証明する声が聞こえてくるからである。 「おにいちゃあん! いいよっ! イイよぉっ!」 この声は母の声だ。実の息子である俺が言うのだから間違いない。 ちなみに母の年齢は……怖くて未だに聞けていないが、父の年齢が36歳ということから考えて、 30代前半だと考えられる。 俺は現在17歳。となると、母は少なくとも18の頃には俺を産んでいたと言うことになる。 なんということであろうか。 兄妹で子供を作ったというだけでもトンデモ話だというのに、このうえ10代で出産していたとは。 その事実を知ったときにはさすがに自分の耳、もしくは脳が損傷していないかを疑った。 「――っく、イクぅっ! あ、ああああああっ! いっぱい出てるうぅぅっ!!」 ……ふむ。 改めて考えてみると子供が起きているというのに、隣室でまぐわっている夫婦の 片割れである母(父の妹)が嬌声をあげているというのも変な話である。 そして、30代子持ちで『おにいちゃん』と言う母の精神年齢の低さも異常である。 俺は母の嬌声なんぞ聞きたくもないし、聞いても全く嬉しくない。 人間の耳に、聞きたくない音声をシャットダウンできる機能があればいいのに、と俺は切に願う。 母にセックスするのをやめてくれ、もしくは回数を減らしてくれ、と頼むことはできない。 以前さりげなくそう言ってみたら、「私とおに――お父さんのスキンシップを邪魔するの?」と言いつつ、 母が俺の首に手を伸ばしてきた。 その場は父がおさめてくれたが、もし父が居なかったらと思うとぞっとする。 本人に言っても無駄なら、それこそどうしようもない。 俺は夜ごとにひたすら頭のおかしい母と、父のまぐわう声を聞き続けなければいけないのだ。 これからもずっと。 父と母の話はこれぐらいにしよう。この家に住んでいるもう2人の話をする。 その2人というのは、俺の弟と妹だ。弟は1つ下、妹は2つ下。 弟は俺のことを慕ってくれる。あまり学校の成績がよくない弟はテストの度に俺を頼ってくる。 そこそこ勉強ができる俺は同じ高校に通う弟の勉強をよく見ている。 その際、弟の勉強を見ている俺を、妹が後ろから見つめてくる。 これが2つ離れた俺の尊敬の眼差しであれば嬉しいのであるが、そうではない。 妹は俺を睨んでいるのだ。それも血走って濁った目で見てくるのだ。 その瞳に何が篭っているのかなど、考えるまでもない。 俺に対する、憎悪である。 妹は、弟を独占する俺を射殺さんばかりに憎んでいる。 とは言っても、それは勉強を見ているときだけのことである。 勉強が終わってしまえば妹は弟にすぐさま飛びついて甘える。見ていて微笑ましくなるほど、激しく甘える。 妹のデフォルトは、弟にくっついている状態なのである。 長男としては少しばかり悲しくもある。だが妹の興味が弟に全ていくならそれでもいい、とも思う。 905 :埋めネタ~ヤンデレ家族~ [sage] :2007/09/24(月) 23 08 13 ID 44vDg8Ym その理由には、俺の趣味が関係している。 俺の趣味はプラモデルを作ることだ。そのため、部屋に立ち入ってもらったら困るのである。 せっかく上手く塗装できたプラモデルに指紋などつけられては大変なことになる。 具体的には飯も食えなくなるほどに俺がへこむ。 しかし、母は父の部屋にしか入らないし、妹は弟の部屋にしか入らない。 俺の部屋に入る人間は、俺以外にいないのである。 たまに父や弟が入ってくることもあるが、俺が部屋にいる時に限るのでいたずらされる心配がない。 というわけで、今の俺は明日学校があるにも関わらず、小言を言われずにプラモデルに色など塗れるわけだ。 ああ、なんという幸福な生活であろうか。 同居人の誰にも邪魔されずに趣味に没頭できる。趣味に生きる人間にとってこれ以上の幸せがあるだろうか? いや――ない。 たとえ寂しい人間と言われようと、今の俺は幸せだ。 それは父と弟という人身御供のおかげであるのだが、とにかく俺は幸せだ。 今は幸せなら、それでいい。たとえ、これからは幸せでいられないとしても。 * * * * * 朝になった。 俺は部屋の隅に畳んだまま置かれている布団に身を預けるようにして眠っていた。 夏というのはありがたい。寝るときに布団を敷かなくても風邪を引かないからだ。 立ち上がり、学生服に着替え、部屋を出て、洗面所へ向かう。 顔を洗い、少しばかり寝癖のついていた髪を水のついた手で撫でる。 それで寝癖が直るわけではないのだが、一応やっておく。 洗面所の次に行くところはリビングだ。 リビングの入り口の扉を開けると、朝食の匂いがした。 リビングのテーブルにはこの家の同居人である四人がすでに食事を始めていた。 母と、母にあーんをされている父。妹と、妹にあーんをされている弟。 二組はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。 ちなみにテーブルに備え付けてある椅子は四脚。全ての席は既に埋まっている。 俺の席は当然無い。朝食も当然用意されていない。 こめかみを押さえて目を閉じる。そして自分に向けて暗示をかける。 ――これはいつも通りの光景だ。今日もいつも通りで安心した。 ――いきなり俺の朝食が用意されていたら、どうリアクションをとればいいかわからない。 ――だからこれでいいのだ。 ……よし、暗示終了。 キッチンに入り、冷蔵庫の中を開ける。 買い置きのプリンがまだあった。これと、あとはトーストを焼いて食べるとしよう。 キッチンに置いてある小型の椅子に座り、焼いたトーストにマーガリンを塗り、食す。 冷蔵庫に背を預けてよりかかり、もくもくと咀嚼しながらテーブル席についている四人を観察する。 「あなた、どう? 今日のお味噌汁」 「ん……まあまあ、かな」 「え? まあ、まあ?」 「はっ! 違う違う。うん、サイコーだよ。やっぱりお前を嫁にもらって成功だったよ」 父が歯の浮くような台詞を言いながら母の頭を撫でた。 母はにこにこ笑いながら父に体をすり寄せる。 見ている方が恥ずかしくなるバカップル、じゃなくおしどり夫婦、もとい仲のよい兄妹ぶりである。 906 :埋めネタ~ヤンデレ家族~ [sage] :2007/09/24(月) 23 09 43 ID 44vDg8Ym さて、もう一組、こちらは弟と妹の組み合わせである。 「お兄ちゃん。あーん」 「……あーん」 妹が差し出した卵焼きが弟の口の中に入った。弟はもぐもぐと顎を動かす。 「うん……ちょっとしょっぱいけどおいしい」 「ホント!? じゃあ、もっとしょっぱくしても大丈夫?」 「いや、気持ち塩を少なめにしてもらえるともっと美味しくなると思う」 「そう? お兄ちゃんはその方がいい?」 「うん」 「わかった。明日からはそうするね。もう一つどうぞ。あーーん」 こちらも両親に負けず劣らずの仲の良さを見せつけてくれる。 これが兄妹同士でなければ兄としては安心できるのであるが……今となってはどうしようもあるまい。 言うだけ無駄だ。よって何も言わないことにする。 四人を見ていて、いつも思うことがある。 父と母。弟と妹。四人はまったくそっくりである。 兄妹という構図もそっくりであるが、その容姿すらもそっくりなのだ。 父と弟はほぼ同じ顔だ。母と妹だってそうだ。 このままいけば、いずれ弟と妹は、両親と同じ道を辿るのではないだろうか。 ありえない、と言えないところが恐ろしい。 実際に妹の行動は、兄妹は仲良くしなければならない、で説明できる行動の範疇を超えている。 高校一年生と中学三年生の兄妹といえば、とっくに兄妹離れしている年齢である。 それだというのに妹は弟にくっついたまま離れようとしない。 これはブラコンの一言で片付けていいものなのであろうか。 俺の本能は否、と言っている。このままではいけない、と言っている。 だが、同時に本能が告げるのだ。妹の邪魔をすべきではない、無理矢理に弟と妹を引き裂けば俺の身に危険が及ぶ、と。 弟のテスト勉強を見ているわずかな時間でさえ俺に譲ろうとしない妹を見ていると、その警告にも納得ができる。 弟と妹にまっとうな人生を歩んで欲しいと俺は願う。両親のように歪んだ夫婦にしてはいけない。 そうは思うものの、我が身かわいさ故にどうしても2人を放っておくしかできない。 だが、いつか弟と妹が両親のように道を踏み外そうとしたら、その時は止めようと思っている。 それが兄としてできる精一杯のことである。 朝食を食べ終えた後、食器を片付けていると電話機が電子音を発した。 リビングに視線を向ける。ピンク色の空間に居る両親と弟と妹はベタベタくっついたままで、電話をとろうとはしない。 もちろんそれはいつものことである。朝食の時間に電話がかかってきた際に応対するのは俺の役目なのである。 いつからそうなったのかはわからない。 もしかしたら自分から望んでそうするようになったのかもしれないが、とうに忘れてしまった。 廊下に出て、受話器をとって耳にあてる。 「もしもし」 「あ、お兄ちゃんの方かな? 元気?」 電話の相手は祖母であった。 祖母と言うには若々しい声である。還暦を迎えていないので、おかしいとは思わない。 「うん。元気だよ。どうかしたの、こんな朝から」 「今日は誕生日だったでしょう。だから電話をしておこうと思ってね」 壁に貼ってあるカレンダーを見る。確かに今日は俺の誕生日であった。すっかり忘れていた。 「ありがとう、お婆ちゃん」 「もしかしたら、まだお兄ちゃんにお祝いしてくれないんじゃないかと心配になったんだけど。 どう? むす――じゃなくてお父さんとお母さんにおめでとうって言われた?」 「うん。それに、今日は朝から大好きなフレンチトーストを作ってもらったから」 「……そう、よかったね」 「うん」 907 :埋めネタ~ヤンデレ家族~ [sage] :2007/09/24(月) 23 14 10 ID 44vDg8Ym ちくり、と胸が痛んだ。俺は祖母を騙している。朝食は自分で作って食べていたのだから。 けれど、ああ言わざるを得ないのである。 祖母は実の息子と娘が肉体関係を結んでしまったことで、心に傷を負ってしまっているのである。 盆や正月、親類の結婚式の時や法事の際に再会した祖母の顔は若々しくもあったが、同時に深い哀しみも湛えていた。 そんな祖母に、心配させるようなことを言えるわけがない。 もしかしたら祖母は俺の偽善――真実を伝えられないという思い――を見抜いているのかもしれない。 それでも、俺にはこうするしかないのだ。なるべく心配をさせないよう、演技をしていくしか道はない。 「弟くんと妹ちゃんは元気?」 「元気がありあまって、こっちが参るくらいだよ」 「……仲が良すぎたりはしていない? たとえば妹ちゃんが弟くんと一緒にお風呂に入ろうとしたりとか」 「ううん。ちゃんと別々に入っているよ」 これも嘘である。弟と妹は一緒の風呂に入っているし、さらに妹は弟に髪を拭いてもらっている。 祖母がこんなことを聞いてくるのは、前例があるからである。 祖母の息子と娘、つまり俺の両親のことであるが、2人が肉体関係を結んでいたことに、祖母は気づけていなかった。 その苦い思いが、二度と同じ過ちは繰り返したくないという思いが、孫へと向けられているのだろう。 だが安心して欲しい。弟と妹がもし過ちを犯しそうになったら、俺が止めるから。 「お兄ちゃんは、どう? 怪我とかしてない?」 「心配性だね。どこも怪我なんかしてないよ」 「無理はしないでね。……あの人も、昔……」 俺は、祖母の声を遮るように声を出した。 「あ、ごめん。もうすぐ学校に行かなくちゃいけないから。また、帰ったら電話するから」 「ええ、気をつけて行ってらっしゃい……」 祖母の言葉を聞き終えてから、受話器を置く。 祖母が言っていたあの人。それは祖母の夫、俺にとっては祖父に当たる人のことだ。 俺は祖父に会ったことが一度もない。俺が生まれたときには、すでに祖父は帰らぬ人になっていた。 俺はそのことを、幼い頃は別におかしいことだと思っていなかった。祖父を早くに亡くしている人はこの世に大勢いる。 祖父の死に疑念を抱き始めたのは、数年前のお盆のことだった。 久しぶりに祖母の家に遊びに来た親戚が、俺に向けてこう言ったのである。 『あら、おじいちゃんにそっくりね』 その場に居合わせた母は、俺の顔を掴みながら睨み付けるように目を剥いた。 祖父の死に疑いを持ち始めたのは、それからである。 もしかしたら、祖父は両親の関係を引き裂こうとして、母に殺されたのではないかと。 母が恨みを込めた目で俺を見たのは、祖父が再び目の前に現れた、と考えたからではないだろうか。 一度考えると、全てを疑わずには居られなかった。俺は祖母に内緒で、祖父の死について調べ始めた。 祖父が死んだのが、俺の生まれる10ヶ月前であること。 祖父の死因は、病死でも事故死でもないこと。――祖父は通り魔に遭い、殺されたということ。 それらを知る頃には、俺はすっかり母への疑いを強くし、祖母を頼るようになった。 そして、俺は母を避けはじめ、間もなくして母から避けられるようになった。 プラモデルを趣味にし始めたのも、母がシンナー系の匂いを苦手にしていると祖母に聞いてからだ。 この家で、俺と母は見えない戦いを繰り広げているのだ。 「兄さん、電話誰から?」 リビングの扉を開けて、弟が廊下に現れた。左腕には妹がくっついている。 「お婆ちゃんからだ。元気にしてるか、って聞かれたから、元気だっていっておいた。お前達の分も」 「そうなんだ。ありがと」 「ありがと、お兄さん」 妹は俺をお兄さんと呼び、弟をお兄ちゃんと呼ぶ。お兄さんと呼ぶときのニュアンスが暗いのは毎度のことである。 「さて、そろそろ行かないと遅刻するな。先に行っているぞ、弟よ」 「ああ、兄さん待って」 玄関に置いたままの学生鞄を掴み、靴を履いて玄関から出る。 ――うむ。今日も朝日が眩しい。快晴だ。
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/655.html
見習いヤンデレ族 黒 クリーチャー ─ ホラー・人間 1/1 あなたのアップキープの開始時に、見習いヤンデレ族の上に情動カウンターが置かれている場合、見習いヤンデレ族の上からそれを取り除く。そうでない場合、見習いヤンデレ族の上に情動カウンターを1個置く。 見習いヤンデレ族は、それの上に情動カウンターが置かれているかぎり有毒1を持ち、そうでないかぎり側面攻撃を持つ。 サイクリング(2黒) みんなでマジック・ザ・モナリングを作ろうよ第32版の425 黒の1マナクリーチャーにしてはまずまずかもしれない。 有毒デッキではないデッキだと少し微妙だが、そこはサイクリングでカバー 1マナクリーチャー で有毒1は強すぎるのでバランスを取った感じのカード
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1083.html
201 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 19 08 01 ID bhJyyyIG いえいえそんなお返しだなんていいんですよ気を遣わなくて! 一ヶ月前、チョコと一緒に入れておいた書類さえもらえれば…ね。 202 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 20 42 29 ID F/HSB6Ll 今年度は我々ヤンデレスキーにとって飛躍の年でありました。 ヤンデレ大全の販売、コミックマーケットで販売されたヤンデレキャラを主にしたゲームの登場、 SNSの有志が主催する同人誌即売会の開催など、ヤンデレの知名度は上がるばかりであります。 しかしながら、ヤンデレ属性のキャラクターに対する誤解も広がってもおります。 刃物などの凶器を振り回している、高笑いしているだけ、男につきまとっているなど、 一般的な感覚から見て過剰ととれる行いをするだけでもヤンデレと認識されるのが現状です。 また、我々ヤンデレスキーに対しても同様です。 ヤンデレ好きの人間は、刺し殺されたいという願望を持っている、刃物を振りかざす女性が好きである、 凶行に走る女性の手助けをする、自身も犯罪を犯す可能性がある、と心ない人々に思われています。 精神を病んでさえいればデレが無くてもヤンデレである、と認める人達もおります。 このように我々を取り巻く環境は厳しくなっております。 今後もヤンデレ属性に対する誤解の拡大が懸念されます。 我々の活力の源はヤンデレ属性の女性の存在です。 返答を間違うだけで命の危険にさらされるほど強力なヤンデレから愛されることを望みます。 我々の精神の安定・安心をはかるには、最低でも隣の家に住むヤンデレに目覚めた幼なじみと、 同じ家に住む過保護な姉、もしくはツンデレな妹が必要であると考えられます。 我々ヤンデレスキーは一致団結し、ヤンデレ抜きの生活の改革を実現する構えであります。 203 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 20 57 48 ID UnHzYT4O 「○○は私のもの」っていうのと 「○○には何されてもいい」っていうのは タイプが違うヤンデレなのかな? 一人のヤンデレがどっちの台詞とも言ったりするかなぁ。 204 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 21 16 27 ID Cv5LnGUV もともと病んでる人が他人を好きになるみたいなのは違うように思うんだ どっかのまーとかみーとかパーとかペーとかいうラノベを読んでいるとどうしても違和感が付きまとう 205 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 21 51 53 ID UnHzYT4O てことは>>「○○は私のもの」とか>>「○○には何されてもいい」とか いう思考回路はヤンデレにはあまりみられるものじゃなかったりする? 206 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 22 08 26 ID BhN2NzJy パーとかペーて誰のことだ? 207 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 22 12 02 ID RgAL6XXe 206 林家だろjk それともそれはまさかギャグで言っているのか? 208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 22 12 05 ID KEVPcaQ6 ピンクのおっさんとおばさんが頭に浮かんで他を想像できねぇw 209 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 23 05 58 ID 8Kt9MiTH 202近年稀にみる演説に拍手を送りたい。 210 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 23 19 21 ID ju6rT4iZ 私はかつて、マナマナという名で呼ばれたこともある女だ 211 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 00 45 44 ID hHZZFRkG 210 総帥こんなとこで何やってんスかw 212 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2008/03/15(土) 08 36 26 ID 4dsk07Ss ヤンデレっ娘に「別れよう」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘の目の前で、他の女性とキスやセックスをしてみよう。 ヤンデレっ娘の目の前で「俺お前の事嫌いなんだ」or「俺他に好きな人いるんだ」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘に内緒で遠い場所に引っ越してみよう。 ヤンデレっ娘に「俺ツンデレ以外好きになれないんだ」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘に【堂々と】「キャバクラ逝ってくる」といってみよう。 ヤンデレっ娘の事を命が続く限り無視してみよう。 ヤンデレっ娘に「俺BLスキーなんだ」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘に内緒でエロDVDやエロ雑誌を集めてみよう。 ヤンデレっ娘を監禁して自由に恋愛してみよう。 ヤンデレっ娘の娘を溺愛してみよう。 ヤンデレっ娘の事を【何があっても】絶対に拒絶し続けよう。 友達がレポートのために全部やってみようと言ってるんですが、どうするべきですかね? 213 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 09 48 15 ID OLXVT0jm 212 それを全部やるってのは、空を飛びながら地表を歩きながら水中を進めって言ってるようなもんだぞ 214 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 09 57 00 ID UrOuOBzV とりあえず100人で行う事をおすすめする。 何人生き残れるか? 215 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 10 04 21 ID tInMXHwm 213-214 の流れを見てレミングス思い出した。 216 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 10 25 27 ID mrI5qiSB あのなぁ、ヤンデレっ娘って実は共生体なんだ。 対象となる男がいて、始めてヤンデレっ娘になる。 つがいでしか成立しないんだ。 貴重なヤンデレっ娘をそんなくだらんレポートで失う訳には行かん!! 217 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 12 20 43 ID GCastQuK 212の内容を全て検証するのは不可能だろう。 ヤンデレっ娘はたった一人しか愛せないから、男が百人居ようとも 212の友人しか見ないはず。 どれか一つ実行した時点で監禁 調教されることは間違いない。 その無謀な友人は 212、君が体を張って止めるべきだ。 友人がオリバさん並に頑強な男ならばもしかしたら、という望みはあるが。 218 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 12 29 30 ID hHZZFRkG てことは、件のヤンデレ娘はジャバ・ザ・ハットみたいなアレか…。 219 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 12 46 02 ID iHWfz5do つまんないからやめてくれ 220 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 14 59 25 ID +b50LJmP リアルで好きな子に首絞められて目覚めてしまった・・・ 221 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 15 06 00 ID +b50LJmP 寺誤爆・・・ごめんね もう・・・7年も前の話・。。。 222 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 15 23 27 ID Twly2CQK 人生はつまらないからこそ、くだらないことが面白い って姉さんが言ってた 223 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 16 48 00 ID UrOuOBzV グゥレイトォな姉だな。 大切にしろよ。 224 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 23 39 05 ID 0genp+2h ヤンデレっ娘に内緒で遠い場所に引っ越してみよう。 ヤンデレっ娘に「俺ツンデレ以外好きになれないんだ」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘に【堂々と】「キャバクラ逝ってくる」といってみよう。 ヤンデレっ娘の事を命が続く限り無視してみよう。 ヤンデレっ娘に「俺BLスキーなんだ」と言ってみよう。 ヤンデレっ娘に内緒でエロDVDやエロ雑誌を集めてみよう。 とりあいず命だけ助かりそうなのをリストup 225 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 23 46 38 ID 7Oq+mqRn 鳥会津? 226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 23 49 41 ID qjPdj1AZ ヤンデレっ娘に内緒で遠い場所に引っ越してみよう。 ヤンデレっ娘に【堂々と】「キャバクラ逝ってくる」といってみよう。 ヤンデレっ娘に内緒でエロDVDやエロ雑誌を集めてみよう。 この三つはちょっとやってみたいな 227 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 01 16 28 ID LPjtezr5 俺の部屋にあったエロDVDがひとつ残らず消えてたことがあった 家族に聞く訳にもいかないからそのままだが 228 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 02 18 42 ID fM3rbUZ+ なんで創作スレでリアルの話になるん? 229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 03 08 04 ID vTOFb/SQ 今日読んだ海外のSF小説のヒロイン(顔に傷あり)が、 主人公が他の女とキスしてるところを目撃してしまって、 「わたしには彼しかいないのに」とさめざめ泣いた後、 彼らが滞在している都市を敵方に売っ払って、ピンチになった主人公を助けることにより もう一度彼の心を自分の方に向けさせようと画策していた。 ヤンデレは世界共通の萌え要素なのだと確信できたぜ。 230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 11 10 23 ID 3w/k4qVp なぁ、アニメのワンピースに出ているカバってヤンデレ? 231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 11 12 37 ID jaOKC1v+ なんでもかんでもヤンデレってなぁ・・・ 232 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 12 10 16 ID Vb7PNAGQ 勘違いヤンデレが増えるくらいならブームにならずマイノリティのほうがいいや… 233 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 12 21 39 ID PrNHcmtC ↑同意せざるを得ない 234 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 12 23 08 ID BBHWAhYH ちょっとストーカーすればヤンデレ リストカットで脅せばヤンデレ ヤンデレは相手のことを第一に考えるんだよ 相手の事脅したりはしない 235 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 13 20 51 ID uZKU5xYj 確かに脅しはないな でも嫉妬から派生する暴力は場合にもよるが個人的にはアリだと思う 236 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17 09 45 ID Oiubn1GM 「別れるっていうんなら、死んでやる!」 と言いながら手首にカッターの刃を立てるんじゃなくて、 「お願いだから別れないで」とか、 「馬鹿なこと言わないで。私はずーっと、あなたの彼女なんだから」 という内容の電話やメールを送り続けたりするわけだな。 うん、脅されるよりもお願いされる方が健気で可愛いね。 237 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17 35 30 ID YZucyE3+ 積極的に脅すのと、結果的に脅してるのとでは、やっぱりちょっと違うよね 238 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18 20 21 ID OsZMSLsO ヤンデレ道は奥が深い… という訳で 新作及び連載の続編と、俺に惚れてくれるヤンデレを全裸で待つか。 239 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18 45 10 ID PrNHcmtC なんか最近定期的に来て下さる作者達が来ないよな まさかヤンデレに監禁…いや、まさかね…… 240 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 19 20 53 ID H/3Daq1J 俺はゆっくり病んでいくのが好きだから、そういう作品書いてるんだが、途中まではヤンデレじゃないからこのスレに投下しても叩かれそうだから投下できない 全部書き上げてから投下という手もあるがその気力は無い 241 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 19 33 03 ID Oiubn1GM 240 結果的に黒化するのなら問題なし。 むしろ、最初から病んでいない方が病む過程を楽しめるからお得な気分になる。 それに、今までも最初から病んでいないヒロインは居た。 242 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 19 35 11 ID H/3Daq1J 一万字書いてもヤミ要素0なんだぜ? というか六万字超えた辺りからしか病まない予定なんだぜ? 243 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 19 44 41 ID ZyfP2B7w 242 私はいっこうに構わん!! …他の人は分からんけど 244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 19 47 48 ID xMJjZTFw 超大作警告だせばおk しかし病みに入らずに断念したなら叩かれるだろうな 245 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 20 18 17 ID mvQqPl3Y 240 最初に注意がきとして書いとけば大丈夫と思うがね。 個人的には投下してほしいです。 246 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 20 22 57 ID PhHg6yDw 言葉様が理想です>< 247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 20 56 25 ID BCEy1vps ヤンデレとかくれんぼしてそのまま放置したい 248 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 04 02 ID H/3Daq1J むしろ俺はヤンデレっ子から隠れていると、 「あ、分かった! かくれんぼがしたいんだね! もう、○○君は子供だなぁ」 とか言ってその辺をガッサガッサ差がされたほうが興奮する 249 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 33 08 ID w4xuIDnz 投下します。第一話目です。 同族元素:回帰日蝕 と関連(時系列では続き)していますので 保管庫でざっと目を通していただけると、より分かり易いかと思います。 250 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 34 25 ID w4xuIDnz 先日、俺は、無二の親友と、その双子の妹である友人を、失った―― 高校に入って一ヶ月程経った頃、親友が同級生の女からストーカー紛いの被害を受け、 親友側についた俺も、少なからず被害にあった。 頭を殴られ階段から突き落とされ、幸い頭の方には異常は無かったものの、脚の骨に 罅(ひび)が入り、入院を余儀なくされた。 入院して途中リタイアとなった俺には事の顛末を知る術は無く、病院から方々に掛けた 電話も、当事者の誰一人として捕まえる事は出来なかった。 そして長い入院期間も六週目を迎えた面会時間終了間際、今まで消息が掴めなかった 親友が病室に現れた。 少し痩せたようだが、五体満足な親友の姿に安堵する。 しかし親友は、こちらが訊いた事には一切答えずに、唐突な別れを切り出した。 一方的に告げられた別れの言葉は、到底納得できるものではなかったが、それだけ告げ ると親友は制止の声を振り切って、病室を出て行ってしまう。 治りかけとはいえ、脚の骨に罅がはいっていた状態では満足に追いかける事も出来ず、 結局退院するまで何も出来ないでいた。 悶々と過ごした入院生活も終わり、退院すると直に親友の家に向かった。 別れを言って去った以上、電話が通じるとは思わなかったし、何より直接会って話さな いと俺の気が済まない。 だが家は誰も居らず、近隣の人に尋ねると、あの事件辺りから居ないようだった。 親友の両親にも連絡を取ったが、親戚の所にいるとの一点張りで要領を得ない。 八方塞。 途方に暮れ、親友の家の前で座り込んでいると、一人の女がやってきた。 「また、お会いできると信じておりましたわ」 美しい女だった。 漆黒の髪は腰まで真っ直ぐに流れ、やや切れ長の大きな目に長い睫毛、陶磁器のような 白い肌に頬の桜色と唇の薔薇色。胸が大きすぎる気もするが、モデルのような長い手足の 体型は均整がとれ、自然と目が惹き付けられる。 そう、忘れもしない、親友が別れを言いに来た際、脚の怪我を圧して追いかけた結果、 不様にも転倒した、その時、俺を助け起し親友と車で去っていった女。 「アンタ……」 「わたくしは、湖杜(こと)と申します。陽太(ようた)さんとは親戚になりますわ」 優雅な立ち振る舞いで、そう名乗った女、湖杜はこちらが名乗るのを待っている。 「俺は、前園東尉(まえぞの とうい)。陽太の親友だ」 これが、この美しい女、湖杜との再会だった。 湖杜は親友の清水陽太(しみず ようた)と親戚で、彼らがもうここには居ないと告げた。 行き先を尋ねても、教えられないとの一点張りで埒が明かない。 「俺は、事の顛末を知りたい。というか、知る権利があると思うんだが」 「そうですわね……お気持ちはよく解ります。けれど、お教えする事は出来ませんわ」 しかしどうしてもと粘ると、湖杜は近況や様子を教えるくらいならと譲歩してきた。 それから俺は湖杜と週に一度、こうしてこのカフェで会っている。 251 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 35 43 ID w4xuIDnz 半ば指定席となったいつもの席に、いつもの様に向かい合わせで座ると、何も訊かず さっさと注文を済ませ、黙ったまま注文の品を待つ。 いつものアイスコーヒーとエスプレッソがきて、一口、口をつけると湖杜が挨拶をし、 陽太とその双子の妹、夏月(なつき)の様子を教えてくれる。 ここまでが、いつもの定番となった、一連の流れだった。 「東尉様……もう、お身体の方は、よろしいんですの?」 「……ああ、もう大丈夫だ」 梅雨の長雨は、完治した筈の脚をじくりと痛ませ、蒸し暑さと共に不快指数を跳ね上げ るが、それを湖杜に言っても仕方が無い。 「温めると良い、と聞きますわ。来週には梅雨明けでしょうから、もう少しですわね」 美しく微笑むと、優雅に音一つ立てず、湖杜はカップに口をつける。 こちらが言わなくても湖杜は全てを読み取り、そして決して厭らしい言い方ではなく、 当然の様にさらりとした気遣いを見せる。 それは、ともすれば厭味や不快に感じる事だが、不思議と湖杜相手だとそんな感情が 湧かず、寧ろ心地良く感じてしまう。 「なぁ……もう少し、会える日を増やせないか?」 だからだろうか、こんな台詞を口にしてしまったのは。 高校はテスト休みに入っていて、残すは終業式だけだったが、家に居ても妹が喧しく、 両親とは顔を会わせたくなかった。 離婚とまではいかないが、どうやら親父の仕事が上手くいってないようで、ここ最近、 親父とお袋は喧嘩が絶えず、見苦しい事この上ない。 そんな家は寝る時だけ居ればいい。しかし外で時間を潰すと言っても、陽太が去ってか ら倦怠感が付き纏い、何のやる気も起きない。 そんな時思い掛けない事から、外で時間を潰すのに格好の場所を紹介されたが、そこは 夕方に差しかかるような時間からしか開いておらず、それまでの時間を持て余していた。 何となく独りになりたくはなかった、だからといって誰でも良い訳でもない。 「構いませんわ。どの位増やされます?」 やはり湖杜は理由を訊いてくる事もなく、すんなりとこちらの要求を飲んでくる。 「どの位増やせる?」 「毎日でも構いませんわ」 参った。本当に考えてる事を読まれているんじゃないかと思う程、言って欲しい返事が 返ってきやがる。 「いいのか? 毎日なんて……」 「ええ。このカフェも夏の間は休み無しだそうですし、問題はないですわね」 問題はそこではない気もするが、何でも無い事の様に微笑まれてはしょうがない。 降参して甘える事にしよう。 「ありがとう」 「わたくしの方こそ、毎日東尉様にお会い出来るなんて、嬉しい限りですわ」 「そう言って貰えると助かる。けど……」 どうして湖杜がここまでしてくれるのか、正直解らない。 その疑問が顔に出ていたのだろう。湖杜はまるで全てを解っているような、そんな 笑みを浮べると、口を開いた。 252 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 37 16 ID w4xuIDnz 「簡単な事ですわ。わたくしは、東尉様が、好きなんです」 その密やかに艶を含んだ涼やかな声が紡いだ告白は、僅かな歓喜と優越感をもたらし、 そしてそれが当然の事の様に、俺の中に納まった。 けれど、告白を受ける気は無い。 確かに湖杜の事は、嫌いではない。寧ろ、好意的に思っている。 しかし陽太の一件や両親の事、それらが二の足を踏ませ、何より俺自身、今に満足している。 告白を受けて、この関係が状況が変わる事が嫌だった。 「流石に今すぐに、とは考えておりませんわ。わたくし自身も急過ぎると思いますし」 そう言って、ゆるりと微笑む湖杜は、やはり俺の答えを解っているのだろう。 断れば、この時間を亡くしてしまう。 受けても、この時間を亡くしてしまう。 しかし、どうするべきか、問題はそこだった。 告白をされた今、現状維持は無理だろう。いくらこちらが望んでも、それは余りに 湖杜を馬鹿にしている事になる。 言葉に詰まった俺のテーブルの上に投げ出してあった右手を、湖杜は両手で掴むと 身を乗り出し、始めて見る切迫した表情で迫ってきた。 「今は、このままで構いませんわ。 ……ですから、わたくしの東尉様へのこの想いを、否定なさらないで。 わたくしを嫌いにならないで。距離を置こうなどと、離れてなど、いかないで下さい」 「……湖杜……」 その大きな瞳には薄っすらと水の膜が張り、眉を寄せ、俺の右手に縋るように湖杜は 艶やかな唇を戦慄かせ、真摯に言葉を想いを訴えかける。 「東尉様……申し訳ありません…… 今、この想いを告げても、東尉様が困る事は解っていましたの」 「……けれど、わたくしは、この想いを、胸に秘めておくことが、難しかったのです」 美しかった。 そう言って伏せた瞳が、色彩る長い睫毛が震えるのを、引き結んだ薔薇色の唇を、 湖杜を形作る全てが、美しく、魅了された。 253 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 38 39 ID w4xuIDnz また俺は、湖杜に甘えようとしている。 いくら湖杜自身が望んでくれているとしても、告白の返事もしないで現状を維持したい など、卑怯な逃げでしかない。 だけど、俺には湖杜が必要だった。 今、湖杜までも失ったら、俺には、ただただ空虚な時間しか残らない。 それも、いいと思っていた。 湖杜に再会して同じ時間を共有するまでは。 しかし、知ってしまった。味わってしまった。湖杜と共に過ごすこの時間の甘美さを。 この満ち足りた時間を手放す事は出来ない。卑怯だと解っていても。 掴まれた右手に力を込め、湖杜の細くたおやかな手を握り返すと、湖杜はゆるりと伏せ た目を上げた。瞬間、耐え切れず遂に零れた一滴を、空いた左手でそっと拭ってやる。 初めて触れた陶磁器のような頬は、温かく滑らかだった。 何となく、そのまま柔らかい頬に指を滑らせ感触を楽しむ。 「……東尉様……」 「湖杜……」 じっと見詰めていた湖杜の吸い込まれそうな漆黒の瞳が、ふっと弛み、固い表情が柔ら かく解けた事で、こちらの意図を正しく理解されたのだと解り、安堵の息を漏らした。 「東尉様、明日も同じ時間に、こちらでお待ちしてますわ」 「……ありがとう」 謝罪の言葉が出掛かったが、感謝の言葉だけを何とか口にし、そのまま別れの時間まで 俺の右手を握り締めている湖杜を、ただ黙って見詰めていた。 街は黄昏に染まり、湖杜と居れる時間が終ってしまった俺は、関係者以外立入禁止の ひっそりとした通路を、先日知り合いになったタカシに教えてもらった、時間潰しの格好 の場所、植物園の中にある温室に向かうため、音を立てない様静かに歩いていた。 タカシとの出会いは可笑しなもので、有り余る時間を前に途方に暮れていた俺を、ヤツ がナンパしたのが切っ掛けだった。 タカシは鋭い切れ長な目と髪を後ろに流し露になった額、180cmある俺よりも10cm程高い 長身で鍛えていそうな体躯が、知的で硬質な雰囲気を醸し出していて、何となく視線を向 けた俺と目が合うと真っ直ぐに近付いてきて「モデルになって欲しい」と、にこりともせ ず言い放った。 何故OKしたのか自分でもよく解らないが、写真のモデルになる代わりに、この温室に 毎日タダで入り浸る事を許された。 辿り着いた温室の硝子の扉を開け、指定席となったベンチに腰掛ける。 カシャと、小さなシャッター音がして、首を巡らせるとタカシがカメラを構えていた。 「よう、トーイ。今日は読書はしないのか?」 「ああ。今日は寝る」 254 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 40 04 ID w4xuIDnz タカシと短い挨拶を交わすと、視線を戻してからベンチに深く座り直し目を閉じた。 断続的なシャッター音が、タカシが写真を撮っている事を告げていたが、別段気にする 事もなく、ゆるりと訪れた睡魔に身を委ねる。 写真のモデルといっても、特にポーズを取らされる事もなく、自由にしていていいと その代わりこちらも適当に撮らせてもらう、と最初に言われていたからだ。 タカシが、どんな漢字なのかも知らない。 苗字も歳も何をしているヤツなのかも、何も知らない。 それはタカシも同じ事で、俺の名がトーイという事以外、何も知らない。 詮索してこないタカシの距離感が心地良かった。 寝ている間に、すっかり夜になっていた。 「じゃ、またな」 「ああ。また、な」 日付が変わる前には家に着けるかギリギリだな、と思いながら、少し固まった身体を ぐっと伸ばすと、そう短い挨拶をタカシと交わし、温室を後にした。 自宅には日付が変わる前に着いた。 鍵を開けて家に入ると静まりかえっていて、親父とお袋の醜い言い争いは休戦中らしい 事が解り、少し気が楽になった。が、 「お帰り」 「……ああ」 自室のドアを開けようとした所で、後ろから声が掛かった。 三つ下の妹、秋佳(しゅうか)だった。 陽太と夏月の兄妹と違って、俺達兄妹の仲は非常に悪い。 秋佳は眉間に皺を寄せ、俺を睨みつけている。その生意気な態度にうんざりした。 どうせいつもの厭味か罵りだろう。 「お兄ちゃん、最近随分と帰りが遅いけど、どこで何してるワケ?」 「お前には関係ない」 「変な人とつるんでるんじゃないでしょうね? やめてよね、お兄ちゃんが警察のお世話 なんかになったら、迷惑なんだけど!?」 「警察の世話になるような事はしてねぇし、するつもりもねぇよ」 「じゃあ、どこで何してるのよ?」 「…………」 本当にウザイ。 これ以上聞いていたら、いい加減殴ってしまいそうなので、無視して部屋に入った。 廊下でまだ何か言っているようだが、知ったことじゃない。 全てを意識の外に追い遣ると、明日の湖杜との時間を思いながら、一番速く時間が過ぎ る方法、寝る事に専念した。 「折角、邪魔だった清水陽太と夏月の兄妹がいなくなったのに……どこの誰よ? あたしの お兄ちゃんを誑かしてるのは!?」 だから俺は知らない。 秋佳がそんな事を言いながら、俺の部屋を睨みつけていた事など。 -続- 255 名前:同族元素:長夜の闇 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 21 41 20 ID w4xuIDnz 以上、続きます。また暫く宜しくお願いします。 以前コメくれた方々、ありがとうございました。 256 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 22 13 45 ID urBGvGN9 255 GJ!!どうやら東尉はヤンデレに包囲されているようですね。 ただ、気になるのは、タカシが男なのか女なのか……。名前からすると男のようだが。 257 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 22 28 41 ID 32S8pDld 255 リアルタイムは初めてだw 乙です!! 258 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 23 20 05 ID BCEy1vps 255 GJ!まさか続くとは…! 259 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/16(日) 23 28 26 ID fm+Jfdsp 最近思ったが、レナみたいなのがヤンデレだなんて言われる理由は、 何をするかわからない、手に負えないというが、ヤンデレのイメージになってるからだと思う。 きっと一般人からすればヤンデレの目的より手段の方だけが強く印象に残ってるんだろう。 だが本来は、ヤンデレの目的の方がヤンデレの正しいイメージであるべきだと思う。 俺のイメージ ↓ 何をするかはっきりしていて(主人公を手に入れるため)、手に負える(絶対に自分の事を愛してくれる)、 260 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 23 56 26 ID O/pCZ2xn ラブラブ相思相愛相手のおっとり家庭的娘が、 実はヤンデレの冷酷超切れ者で、 二人の幸せの障壁は完全犯罪で潰して行きかねないことを知って 主人公が(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルしながら 今の平穏を守っていこうとするパターンが好きです。 261 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 00 11 47 ID VR7X/rDz 260 おっきした 262 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 00 40 38 ID Yt8HvTIo 255 GJ 東尉にも陽太と夏月みたいに幸せになってほしい 263 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 03 32 31 ID aCdeT5WN 255秋佳はキモウトか。こりゃ危ないなぁ。そして湖杜の方も何かが隠れているという気がしてならない。 2人のこの先がとても気になる。wktkして続き待ってる。GJ!! 264 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 07 45 49 ID X7Zzh6v9 255GJだぜ! 俺はホワイトデーのおかえしって言われて3日間姉妹に雑用させられてたぜ おかげでPCすら使えずじまいだったよ 三倍返しが3日間雑用ってないだろ たかがチョコ2つだぞ? 265 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 11 18 40 ID qLOxYyO3 264 とりあえず自慢は外でやってくれ 266 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/17(月) 11 35 25 ID Q39I77TL 255 続きktkr 前作で東尉は良いヤツだったからなあ、幸せになってほしいが 267 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 11 37 04 ID Q39I77TL sage忘れた;; スマン 268 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 16 19 22 ID S34fQ3NA とりあえず、タカシが実は女だったに10ペリカ程賭けさせてもらうぜ 269 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/18(火) 00 15 15 ID hl8QSvWo 255 続編ktkr GJ 270 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 00 23 05 ID hl8QSvWo あれ?いつのまにかsageが消えてた・・・・。 吊ってきます。 271 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 00 55 49 ID n/tu84KE 259 レナは暴走するとアレだけど普段は普通だからなあ その辺のギャップをヤンデレと混同してるのもあるかも 272 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 02 36 01 ID oy4ELj9b 今ここ見てたら外でアハハハハ らしき声?(結構高めの感じで)が聞こえて本気でびびった。なんか普通に笑って出す声じゃない感じでちょっと鳥肌たった。 273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 07 09 01 ID fpX8/hsy だからそういうのはSSスレでやるなって 雑談でもないしさ 274 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 09 10 03 ID O5HGhvY2 255 包囲網ktkr ツンの底にドス黒い独占欲… 275 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 14 10 44 ID QBK7jRTF ポケモンのチコリータは独占欲強いよね。嫉妬もするしまさにヤンデレ! 276 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 20 03 59 ID 2KMtAsPl 投下失礼します。壁に耳あり障子に目あり、というものを書いてみました。 ご容赦の程ををを。 277 名前:壁に耳あり障子に目あり[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 20 04 54 ID 2KMtAsPl 「――それで信仰の為にこの聖書を買って勉強会に参加しませんこと?」 「いえ、ですから僕には必要ないんですって」 ファンデーションと香水のダブルパンチは僕にはキツイ。鼻が曲がりそうだ。 「でも神様を信じていらっしゃるんでしょ?」 神様を信じてたらみんなソレを買うのが当然、と言いたいのだろうか?この老婆は。 「あの……自分で言うのも何か嫌なんですけど、――僕目が見えないんです」 「……え、本当に? ……嘘吐いてるわけじゃないですよねぇ?」 声色は疑惑だが察する雰囲気は断定だ。 ここで法的な言い訳でもして帰ってもらおうと口を開いたところを他の声が遮った。 「おいババア、てめぇが調べる権利もこっちが胡散くせぇ本を買う権利もねぇ。それでも何かいいてぇなら今から来る警察に話してくれよ」 ピッ、と軽い電子音が聞こえた。多分うちの子機の電源を切る音だと思う。 「あ、あらそう? ごめんなさいね? 変なこと聞いちゃって。それじゃあごめんあそばせ」 重めの音を立てて床をすべる音が聞こえる。太った? なんて聞いたら関節技をきめられるので止そう。うん。 その乱暴な音の主は、これまた乱暴に戸に鍵をかけ乱暴に振り向いた。 「姉さん、このえ姉さん。目上の人は労わらなきゃ駄目だよ」 「いいんだよ。年寄りってのは自分が年寄りってことに甘えてるんだからよ。ってかお前もお前だ。女の私が男らしくて男のお前が女らしくてどうすんだ。情けない」 「姉さん、それは姉さんも情けないってことだよ」 腰に手を当てて深く溜息を吐く姉が見える。 「真二、お前は私と違って随分と頭が良いんだろう? だったら持ち前の頭脳であんなババアはささっと追いやれよ。」 それをやろうとしたんだけど姉さんが……とは言えない。 「さあ、将棋の続きしよう。茶入れてる間にお前が逃げたかと思ったぜ。勝ったら何でもいう事を利くんだよな?」 「分かってる。逃げないしいうことも利くよ。勝てたら、だけど」 「何でも……何でもかぁ。お風呂、いや恋人デイ……うんこれだな!」 何か一人で唸っている姉さんは放置。しかしなんか鼻息荒いね、姉さん。風邪? 「だあああ、何で勝てねえ! 飛車角銀無しだぞ!? ええ? それで勝てないってのはアレか? 遠まわしに馬鹿だと言われてるのか私は!」 「なんていうか、姉さんは直情型過ぎるんだよ。だって自分の陣地全然守らないし。王手って言われた時だけ守るとかどうかと思うよ」 「それはなぁ、攻撃は最大の防御って奴だよ」 ニヤリと自慢げにいうこのえ姉さん。アホくさ。 「まあ、そんなアレな自論はどうでもいいから、片付けと晩御飯宜しくね」 ちっ、という舌打ちとともにカラカラと駒を片付ける心地よい音が聞こえる。 「なあ、毎回聞くけどよ。お前本当に目見えてないのか?」 またか。これで何度目か分からない言葉を繰り返す。これからはテープに録音して聞かせようか。 「本当に見えないよ。僕はただ『音で分かるだけ』だから」 「そうは言うけどよ。お前普通に戸を空けるし階段上るし……本当にその鈴鳴らすだけで周りが分かるのか?」 そういって姉さんは僕の手首についた鈴を指で弾く。 「そうだ、としか言いようが無いよ。それより姉さん、歩が一個床に落ちてるよ」 むっ、と少し唸って眉を寄せる姉さんの顔が僕の頭の中で浮かび、段々と消えていった。 変な能力だと自身ですら思う。しかし医者に聞いたところ超能力的なものではなく、意外と科学的なことらしい。訓練次第でできる人間もいるとか。僕にはそれが先天的に使えた。それだけだ。 下の方からくぐもった声が聞こえる。いつものように耳を澄ましてみると姉さんが机の下に居るのがおぼろげに見えた。 「しかし私にはやっぱ普通に見えてるようにしか思えねぇな。普通に瞬きするし、こうやってチェスや将棋もするしな。違うのはその手首の鈴だけだ」 「そんなことないよ。僕は色が分からないしテレビや本は見れない。まあ本は姉さんが読んでくれる、色は思い出せばいいけど、やっぱテレビは少し気になるかな。なんか方法考えないとね」 「例えば?」 「……姉さんが実演してくれるとか?」 音はずれてるのに必死になって合わせようとしている姉さんを想像して僕は笑った。でもそれもいいのかもしれない。 「お前は本当に酷い奴だな。いいだろう! やってやるよ。主にホラー映画をな!」 278 名前:壁に耳あり障子に目あり[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 20 05 47 ID 2KMtAsPl 「ねえ、このえ姉さん」 「なんだ想像して怖くなったのか?」 フフンと勝利を確信したような音が聞こえる。 「僕の股の逆方向に歩が落ちてるんだ。そっちは近づいても何にも無いよ?」 ゴンと低い音がなった。合わせてテーブルのコップが倒れる。何も入ってなくて僥倖。 「ななな何を言うんだこの弟は。分かってるに決まってるだろ? ま、まったくもう」 云々唸っている姉は放置して今日の献立を予想する。コロッケか唐揚げ、どっちだろう? 卵かけご飯だった。手抜きここに極めり。 279 名前:壁に耳あり障子に目あり[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 20 07 45 ID 2KMtAsPl 短いですが投下終了です。まだヤンでないのであれかも知れませんが 大体方向性はわかるんじゃないかなぁなんて。 それでは失礼します。 280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 23 08 13 ID f/fe44d5 279 短いのとちょっと状況がわかりにくかったのが残念かな でも題材は面白そう、次に期待してます 281 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 23 12 19 ID zfNSe3F0 GJ! 男前な姉に萌えた 弟のは、ちょっと前にテレビでやってた音の反射でわかる人ですね 282 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 00 19 52 ID s/HlyuSl イルカみたいな奴だな 283 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/20(木) 05 16 17 ID Nf3qKroH 疑問なんだが わざわざ自分の時間を割いて、低レベルの駄文を晒して 悦に入る心理ってどうなの? 自己顕示欲もろだしなのがうざいんだけど? 反応あっても1、2レスってむなしくないか? まあそのレスもかなり自演臭いんだけどなw 小説家気取りの馬鹿は困ったものだよねぇ? 284 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 06 06 38 ID qShsNQgn と、ヤンデレさんが申しております 285 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 06 38 04 ID 4dCMY6hF 疑問なんだが わざわざ自分の時間を割いて、低レベルの批判レスを晒して 悦に入る心理ってどうなの? 自己顕示欲もろだしなのがうざいんだけど? 反応あっても1、2レスってむなしくないか? まあそのレスもかなり自演臭いんだけどなw 評論家気取りの馬鹿は困ったものだよねぇ? 286 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 07 09 16 ID I6xrH0ni 春ですねえ 287 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 08 13 18 ID Gxf96Gx6 春だなぁ 288 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 09 05 41 ID s/HlyuSl 285 ああ、隣りの国のことね 289 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 09 26 11 ID Rn3OOMzo ヤンデレに膝枕されたい で、うっかり名前を間違えたい 290 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 10 28 45 ID F0XAUius 286-287 なんか妙に平和だなwww なんか和んだw 291 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/20(木) 11 15 27 ID IjztZp5a 自演うざ きめぇw 292 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/20(木) 11 17 33 ID IjztZp5a きもw うんこwサ 293 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 11 46 25 ID QHGbxfNC いまどき小学生でもこんな低レベルそうそうおらんやろ…… 294 名前:名無しさん@ピンキー[kyd2enj] 投稿日:2008/03/20(木) 12 36 37 ID j00Iggue そういえば、友人に勧められて「未来日記」という漫画を読んだんだが、 物凄い、ヒロインが、怖かった…。 漫画でヤンデレヒロイン久しぶりに見たな…。 我妻由乃(がさい ゆの)とか言うんだけど、みんな知ってる? 295 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 12 45 44 ID 8aPvl787 多分このスレではかなりメジャーかと 前話題出てたような覚えがある 296 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 12 50 35 ID Szh87agw むしろこのスレの住人で知らない奴いるのか? 297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 14 30 36 ID /vdaBtTd 初代から出てたな 298 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16 50 47 ID 99X7zExf すみませんねぇ、うちのスレの住民がおかしなのをこちらのスレに誘導しちゃいまして 以前から民度の低いスレだと思っていましたが、まさかこれほど常識がないとは・・・ やってはいけないことをやってしまったようです 本当に申し訳ない 今度こそ本当に愛想がつきました 299 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16 51 53 ID mmu04+Pl ヤンデレがある程度の知名度をえた一因だと思うぞ由乃は 300 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16 58 35 ID 1p2oQEjk まあ、阿修羅さんにしても潮時だったことだし、幕を引くのに丁度いい機会なんじゃない? 301 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 17 12 43 ID kpgUeTsC ゆのかわいいよゆの 302 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 17 37 12 ID XQaO7gSy ゆのがかわいいと思った俺は異端ですか 303 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 17 57 44 ID Szh87agw このスレに限っては正当 304 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 17 59 38 ID mmu04+Pl 302 由乃が可愛くない人はあんまりこのスレには来ないと思うが 305 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 18 30 20 ID QHGbxfNC 空鍋→由乃→ナイスボート のステップでヤンデレがメジャーになった感 306 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 19 28 12 ID gv73oaMF 305 Nice boat なんかうろ覚え綴りだから絶対間違ってると思う突っ込め誰かっ さて、スレ住人のみなさんどんなヤンデレが好きか聞いてみる 俺は嫌われたくないからと尽くしてくれる子とかが好きだ 307 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 19 30 35 ID cbpyfK1G 由乃ってメジャーか? 空鍋とNice boat.はニコニコ動画のせいで有名になってしまったが 308 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 19 32 45 ID Szh87agw 306 俺もそういうのが好きだなあ 307 >由乃ってメジャーか? このスレの住人に聞いても正当な答えとはいえないだろw 309 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 19 37 09 ID zNAwzwNw 前からそれなりに知名度はあったような まぁどっちかと言うと最近のヤンデレブームというか そういうので有名になったと思うが 310 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 16 29 ID Gxf96Gx6 そんな空気の中あえて言おう ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ、と 311 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 21 04 ID cbpyfK1G 俺は未来日記一巻しか読んでないからわからん 312 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 23 37 ID Gxf96Gx6 311 最近のヤンデレってどっかサイコデレと混じってる感あるじゃん でも未来日記は実にヤンデレらしいっていうか、ヤンデレキャラの教科書って感じ 313 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 24 03 ID mmu04+Pl 311 一巻の時点でかなりレベルの高いヤンデレだったような 314 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 27 17 ID rw88VOBP 俺はどんなことがあっても、ひたすら側にいてくれるヤンデレが好きだ ヤンデレの基本じゃんと思われるかもしれないが、邪魔者の排除や監禁なんてなくてもいい それだけあれば、俺には十分だ 315 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 29 35 ID pgHy65xQ 314 同意。他に魅力的な女が現れた~って場合でも、排除しようって考えるよりは 「やっぱりわたしじゃダメなんだ」と過剰な自己嫌悪に陥るような病み方が好き。 まあそういうのってヤンデレとは言わないのかもしれないが……どうなんだろう? 316 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 20 44 09 ID LDiiyDFn 人間の数だけ病み方が違っても良いと思うんだ 317 名前:幼馴染[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 05 03 ID IONC9RsG ――暑いな……。 俺は事に至る前に設定した暖房の温度に汗をかきながら、眼下にいる女に 抽迭を繰り返していた。ベッドのシーツは俺と彼女の汗と淫らな液体で、所々 にしみを作っている。 うっすらと日焼けした彼女――最近付き合いだした俺の彼女・玲菜も全身を うっすらと紅く染め、俺が突き上げるたびに快楽の声を放ち、霧のような汗を 飛び散らせている。 「あぁん……! 浩一郎っ……! す、すっごく熱いよぉ! あ、あたし……、も、 もう……んはっ!」 玲菜が俺の背中に爪をつきたてる。そろそろ玲菜は達するらしい。 ……後で背中に引っかき傷ができていないか、鏡で確認しないとな。 俺はそんな事を頭の隅で考えつつ、まずは玲菜を達しさせて俺もフィニッシ ュを決めようと、両肩に抱えた玲菜の脚をさらに高く広げるように持ち上げる。 俺と玲菜の結合部分から、白っぽい泡のような液体が ぬらぬらと艶かしく 光を放っているのがよく見える。 脚を広げた事により、いくらか締め付けが緩くなった玲菜のそこに、俺は力 いっぱいいきり立った俺自身を突き上げる。 「……っっ! んぁああっ! 浩一郎! あ……たし……イ、イくぅっっ!」 玲菜の身体が小刻みに痙攣し、一瞬硬直した後、全身から力が抜けて行く のがわかる。達したのだ。 では、今度は俺の番だ。ぐったりとした玲菜の上に押しかぶさり、玲菜の奥 深くまで、何度も何度も俺自身を力任せに打ち付ける。 かすれた玲菜の小さな喘ぎを、湿った肌同士がぶつかり合う音が打ち消し てゆく。淫らな水音と、互いの肌が奏で合う音が部屋の中を満たしていた。 玲菜の秘所の奥深くにある 少しざらついた天井を、熱く滾った俺自身の先 端で突き上げる度に、半分朦朧としながら玲菜自身も腰を動かし、小さな悲 鳴に近い歓喜の声をあげる。 「……玲菜。俺もイくぞ!」 ガクガクと玲菜の体を揺さぶりながら、俺は最後の抽迭を急がせる。 湿ったリズムの速度と音量がぐんぐん上がり、ついに俺も頂点迄上り詰めた。 一瞬、頭の中がスパークし、俺は痺れるような感覚で玲菜の中に熱い性欲 を解き放つ。 精を解き放った瞬間、玲菜の脚に力が篭り、背中に回した腕と絡めた足で 俺を締め付けてきた。玲菜の秘所は、結合部をより深く咥えこみ、離そうとし ない。まるで俺の全てを喰らい尽くそうとする、別の生き物のようだ。 俺はそんな性に淫らで貪欲さを示す玲菜の反応が気に入っている。体の相 性がいいのだろう。 一滴残らず射精した後、俺は一息つくと玲菜の上からゆっくり横に寝転がる。 そして、まずは手探りで暖房のリモコンの電源を切る。 きちんとベッドメイクされていたシーツはもうぐしゃぐしゃだ。汗と俺達の液で 乱れており、マットの下に織り込んだ部分までベッドの上にずり上がっている。 俺はそのマットから外れたシーツの端を無造作につかむと、汗まみれにな った顔を拭った。 しわになったシーツは、今まで俺達がセックスをしていた証の淫らな匂いが 染みついていた。 318 名前:幼馴染[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 06 23 ID IONC9RsG しばらく脱力していた玲菜が、のろのろと上半身を起こし、ベッドスタンドに置 かれたバージンスリムという煙草に手を伸ばす。 細い煙草を咥えると、整った爪先でライターから煙草に点火する。 「玲菜、お前煙草吸うんだっけ?」 玲菜は煙草を吸う、というよりは吹かしつつ、悪戯っぽく笑う。 「えへっ……。この間見た映画の真似。なんだか大人っぽい雰囲気でしょ?」 俺は無言で玲菜から煙草を奪い取り、灰皿の上で火を消した。 「玲菜には似合わないよ。少なくとも俺は、愛し合った後に女が煙草を吸うの はあんまり好きじゃない」 ……ちょっと格好付けすぎたか? 一瞬俺は思ったが、玲菜の方はしゅんと して、俺を上目遣いに見上げている。 「……ごめん。浩一郎が嫌ならやめるよ。もう煙草なんか吸わない。美味しく なかったしね」 一見、今風の割り切った女性のように見えるが、そんなしおらしさが玲那に はある。付き合い始めて半年、俺はそんな玲菜に惹かれ続けている。 「浩一郎? あたしの事、嫌いになる?」 玲菜が再び俺に抱きついてきた。 普段なら、ここで第二ラウンド開始なのだが、残念ながら今日はスキンの残 りがもうない。 それに、今日俺はこれからちょっとした用事があるんだ。 「嫌いになんかならないさ。でも今日はこれでおしまい。スキンも在庫切れ。 残念だけど、続きはまた今度な。それと、夕方からちょっとした用事があるん だよ。悪いけど、シャワー浴びたら今日は帰ってくれないか?」 『帰れ』という言葉に玲菜がぴくんと反応する。 「用事って何? まさか女じゃないでしょうね!?」 割と鋭いなと苦笑するが、そんな色気のある話じゃない。 「一応、来るのは女だけどさ。ただの従妹だよ。今度うちの大学に入学するん で、同じマンションに部屋を借りるから、面倒見てやらなきゃいけないんだ。 そのうち、玲菜にも紹介するよ」 玲菜は不審そうに俺を見つめるが、諦めたように裸のままベッドから降りる。 「ちゃんと紹介してよ? 美人なの、その子って?」 「さぁなぁ……。俺ももう何年も会ってないし。色白の日本人形みたいな記憶 はあるが、女は年月で変わるからな。さぁ、急いだ、急いだ!」 俺は裸のまま振り向いている玲菜の尻を軽く叩いた。玲菜はやや不機嫌そ うに肩をすくめ、浴室へと消えて行く。 とりあえず従妹が駅に着くのは17 45予定。 それまでにこの乱れたシーツだけでも洗濯機に放り込んでおかないとな。 自分も起き上がると、まだ己自身にスキンがへばりついているのに気づき、 無造作にそれを外すと ティッシュに包んでゴミ箱に投げ込んだ。 そして、淫欲で汚れたシーツを換えるべく、ベッドからやや乱暴に剥ぎ取った。 319 名前:幼馴染[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 07 15 ID IONC9RsG ――上京してくる従妹。確か、名前は藤堂美佳。 子供の頃は、何度か彼女のお屋敷で遊んだ記憶がある。 俺の家は藤堂の分家だが、彼女は藤堂本家の一人娘だ。確か最初は兄貴 もいて、一緒に遊んだ記憶はあるが、俺達がまだ幼い頃に不慮の事故か病 で亡くなっている。当時、悲しくてわんわん泣いた記憶はあるが、何故死んだ のかについては記憶が曖昧で覚えてはいない。 つまり美佳は唯一残された、藤堂本家を継ぐ娘なのだが、その大事な跡取 りをよく四年も娘一人で上京させる事を許したな……とやや不思議ではある。 その位、藤堂家は由緒ある古い家柄なのだ。 まぁ、俺には関係ないさ。分家の親父達の言いつけで、しばらく兄貴として お嬢様が都会に慣れるまでのお守りをするだけだ。 俺は新しいシーツでベッドマットを包みながら、これからやってくる従妹につ いて反芻していた。 玲菜は相変わらず不満そうにブツブツ言いながら、ストッキングが伝線した だのとグズグズしている。作業を続けながら、ご機嫌取りの会話をし、なんと か部屋の玄関まで追い立てる事に成功した。 「夜、きっと電話してね。浩一郎。忘れたら、直接ここに来ちゃうからね!」 「わかった、わかったって。謝るからさ、玲菜」 「じゃ、約束のキスして!」 部屋の玄関口でとんでもない要求をしてくる。外国じゃあるまいし、そんな所 をご近所に見られたらどうするんだ!? 俺はやや狼狽した。 しかし、要求に応じてやらないと素直に帰ってくれそうにもない。俺は軽く辺 りを見回すと、玲菜を抱き寄せて唇を重ねた。その途端、玲菜は俺の頭に腕 を絡ませ、ねっとりと舌を絡ませてきた。 これじゃ挨拶代わりのフレンチ・キスどころかディープ・キスだ。 しばらくの間俺の口内をむしゃぶった玲菜は、やっと納得してエレベーター に乗り込んだ。玲菜を見送った後、口の周りについた彼女のルージュに気づ き、慌ててシャツの袖で拭う。 ――やれやれ。女の嫉妬は可愛いだけでもないんだな……。 俺は紅く染まった自分の袖口を見下ろしつつ苦笑すると、性の臭いが篭っ た部屋の換気作業と掃除機をかける為に部屋に戻った。 少し急がないと、お嬢様をお待たせしてしまう事になる。 「……間もなく、○○線が当駅に到着いたします」 無機質な駅のアナウンスが流れてくる。さて、会ったら呼び名はどうしよう? 美佳ちゃん、でいいのかな。年下にさん付けも変だしな。 俺はそんなどうでもいい事を考えながら、ホームに入ってくる新幹線を見つ めていた。 確か6番線のグリーン車から降りてくるはずだ。 「6番線、6番線……っと。この辺か」 下を見ながら歩いていると、新幹線の扉が開く。さぁ、数年ぶりの再会だ。 十年以上前の写真を握り締め、俺は降りてくる乗客の顔を眺めていた。 「浩ちゃん! 浩ちゃんでしょう!?」 突然、鈴を転がすように澄んだ声が、昔懐かしい呼び名で俺に呼びかける。 声の主の方を振り向いて、俺は一瞬硬直する。 昔から日本人形みたいな顔立ちだったと記憶していたが、陶磁器のように 真っ白な肌、艶やかで真っ直ぐと伸びた長い黒髪、黒曜石の瞳が赤い唇を際 立たせている。紛れもない美少女が、俺に向かって駆け寄ってきた。 320 名前:幼馴染[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 08 15 ID IONC9RsG 群青色のツーピースに白い手袋をしていた彼女は、俺のそばまで駆け寄る と、真っ白な手袋を惜しげもなく投げ捨て、俺に抱きついてきた。 「ああ、浩ちゃんだ! すごく会いたかった! 私の事、覚えてますか?」 俺の首に飛びついた彼女は、背丈が足りないせいか脚が宙に浮いている。 それでも不思議と体重を感じなかった。こんなに再会を喜ばれるとも思って いなかった俺は当惑し、間抜けなセリフしか出てこなかった。 「えっと……。美佳ちゃん……? 大きくなったねぇ」 少女は俺に抱きついたまま、顔を俺に近づける。 「嫌。浩ちゃんったら、そんな他人行儀な呼び方して! 私の事は美佳って呼 んでくれてたでしょう?」 今にも紅い唇が触れ合いそうな距離だ。俺は益々どぎまぎした。 「そ、そうだっけ……?じ、じゃあ。美佳。よく来たね。迷わなかったか?」 美佳は相変わらず唇が触れ合いそうな距離でくすりと笑う。甘い吐息が俺 の顔にかかっているのに気がつかないのだろうか? 「嫌やわ。浩ちゃんったら。美佳はもう大人です! 浩ちゃんのお嫁さんにだっ てなれるんよ?」 ――へっ!? いきなり冗談か? 俺はとりあえず聞き逃しておく事にした。 すると、美佳は俺のとぼけぶりに 形のよい眉を片方吊り上げた。 「……忘れちゃったの? 大人になったら、美佳をお嫁さんにしてくれるって。 浩ちゃん、美佳と約束したでしょう? 私、ずっと楽しみにしてたんよ!?」 そんな昔の事を持ち出されてもなぁ……。きっと久しぶりの再会で、はしゃい だ美佳が、俺をからかっているだけだろう。たまに方言っぽい発音が混じって いるのも、きっとはしゃいで気がついていないんだろうな。 いきなり先手を取られっぱなしだが、いつまでも抱き合っているのも気まず い。俺は美佳を降ろすと、投げ捨てた手袋を拾ってやり、彼女に渡した。 「さ、さぁ。じゃ、いつまでもここにいるのもなんだし、美香の部屋に行こうか。 荷物は他にあるのかい?」 小さな(多分)ブランド物のバッグと、ちょっと少女趣味な小ぶりのトランクケ ース。美佳の所持品はそれだけだった。 降ろされた美佳は、ちょっと物足りなさそうだったが、荷物は他にはない、と 答えると、今度は俺の腕に彼女の腕を絡ませてきた。 いきなり腕を組んでくる美佳の大胆さに、俺はまたも居心地が悪くなって、 思わず周囲を見回してしまう。 「おいおい。美佳はもう大人なんだろ? 従妹同士で腕組むか? 普通?」 「誰も従妹とかなんて知らないでしょ。浩ちゃんたら相変わらず照れ屋さんな のねぇ。でもね、美佳は浩ちゃんとずっとこうして歩きたかったの! ダメ?」 黒い瞳が、俺を吸い込みそうに見つめる。まだ、あどけなさを残す瞳に、俺 はなんだか拒む理由がない気がしてきたので、美佳の思うようにさせる事に した。 美佳は嬉しそうに俺の片腕に体を押し付け、ぴったりと寄り添う。 俺は残った方の手で、小ぶりなトランクケースを持ってやる事にした。 「ふふ……。こうしてたら、私と浩ちゃんって、恋人同士に見えるかな? 見え るよね? 早速、最初の夢が叶っちゃったぁ~」 美佳は嬉しそうに、俺の腕に頬ずりをしながら小声で囁く。 俺は相槌を打つように笑いながら、美佳を連れてタクシー乗り場に急いだ。 321 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 10 11 ID IONC9RsG 先にタクシーから降りた美佳は、俺達のマンションを嬉しそうに見上げた。 「浩ちゃんのお部屋は406号室だよね? 美佳は506号だから……浩ちゃ んのお部屋の真上になるのかな?」 まだ住人不在のマンションには、明かりが灯っていない。 暗い部屋の窓を、美佳は指差しながら探していた。 確か506号室は私立の医大に通う学生が先月まで借りていたのだが、い つの間にか空室になり、美佳が借りる事になったのだ。 藤堂家の力が動いたのか、他だの偶然か。それもどうでもいい事だった。 「美佳、オートロックの使い方とかは読んできたのか?」 「ううん。浩ちゃんが教えてくれるだろうと思って。暗証番号だけはメモしてきた」 美佳は笑いながらバッグの中に入れていたメモを手渡してくる。 やれやれ……。大変なお守りを任されちゃったなぁ。 メモを見ながら、美佳の郵便受けをまずチェックする。実家から手紙やら届 いているかもしれない。 「いいか、美佳。郵便受けはこうやってロック解除するんだぞ?」 「はぁ~い!」 俺はなんとなく家庭教師気分で、美佳の郵便受けの扉を開いた。 DMが数通と、茶色い袋に入った封筒が1通。 DMは屑篭に捨てると、茶色い封筒を美香に手渡した。 美佳は封筒を受け取って、差出人を見ると、興味なさそうに破ろうとする。 俺は差出人の名前がちらりと見えて、慌ててその手を引きとめた。 「ちょっと待った! 美佳! それ……T大の通知じゃないのか!?」 思わず美佳から封筒をひったくる。 「いいんだってば。浩ちゃん! そんなの受けてみただけなんだから。 私は浩ちゃんと同じ大学に行きたいの!」 美佳が迷惑そうに封筒を取り返そうとする。俺は悪い事だと自覚しつつ、そ の封筒を勝手に開けてしまった。 ――藤堂美佳。右の者、T大理Ⅲに合格とする。2***年*月*日……―― ……T大合格!? それも理Ⅲ!? 俺の通ってるのは平凡な私大だぞ!? 「返してっ! 浩ちゃんのバカッ! 実家にばれないようにって、ここの住所書 いておいたんよ!」 呆然としている俺から便箋を奪い取ると、美佳は急いで破り捨てた。 「お、おい! 勿体無い事するなって! 親に黙って大学決めたのか?」 修復不能なほど紙を細かくちぎった後、美佳は真っ直ぐと俺を見つめて言う。 「だから言ったでしょ! 私は浩ちゃんと一緒にいたいの! そこは義理で受 けただけなんだってば! 行く気なんか最初からなかったんだもん!」 「……」 T大といえば、誰しも憧れる難門なのに、平然と合格を蹴る美佳。 離れていた年月の間に、美佳に何があったのだろう? 「もういいでしょ。浩ちゃん、寒いよ!早く中に入ろ? ドア開けてよぉ~」 「あ、ああ……」 いわれて見れば、受かったのは美佳であって俺じゃない。美佳の意思が決 まっているなら、俺には何も言う権利はない。 しかし、なんだか美佳に対する敗北感が陰鬱に俺を襲っていた……。 俺はのろのろとオートロックを開け、エレベーター呼び出しボタンを押した。 322 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 11 54 ID IONC9RsG なんだかいつもよりエレベーターの動きが遅い気がした。 やっと5回に着くと、506号室の前で立ち止まる。 「美佳、鍵は?」 「え~と……。ちょっと待って。あ、これこれ」 やはりブランド品らしいキーケースごと俺に手渡す。 「鍵くらい、自分で開けろよ。美佳」 「だって~。なんだか緊張するんだもん。じゃぁ、浩ちゃん、一緒に開けよ?」 ……はぁ? 俺は意味がわからず、美佳を見つめた。 「ほら~! ウェディング・ケーキの執刀みたいにやろうよ! これもやってみ たかったんだぁ~。美佳」 美佳はキーケースから部屋の鍵をえり分けると、俺に握らせ、その手の上 に、自分の小さな手を添えた。 なんだか馬鹿馬鹿しい茶番を演じているようで、俺はさっさと事を済ませてし まいたかった。 「じゃ~ん! これから美佳と浩ちゃんのお城の門を開けま~す!」 はしゃいでいる美佳に、ややげんなりしながら部屋の扉をあける。 「……当たり前だけど、真っ暗だね……。浩ちゃん、電気のスィッチはどこ?」 「へいへい……。お前も早く覚えろよ? 毎回呼ばれるんじゃかなわないぞ?」 すっかり主導権を握られている。俺はめんどくさそうに、俺の部屋のスィッチ と同じ位置をまさぐった。 しかし、さすがに今日上京したばかりの少女をホテルに置いてくる訳にも行 かないだろう。 「今夜だけだぞ? それと、俺の部屋には何も食うもんなんかないからな!」 美佳は嬉しそうに笑うと、またも俺に抱きついてきた。 「心配しないで! どっちにしろ、今夜は浩ちゃんのお部屋で再会のパーティ ーするつもりだったから、ケータリングの手配はしてあるの!」 ……やられた! こいつは高級ホテルなんて泊まり慣れてるお嬢様だった んだ! 「さ、浩ちゃん。お部屋に連れてって。男の人のお部屋なんてはじめて!」 俺は美佳に引っ張られながら、部屋はきちんと片付けていたかを気にしつ つ、俺の部屋へと足取りも重く歩き出した。 俺の部屋の前には、既に某有名ホテルのケータリングサービスが待ち構え ていた。 「藤堂様ですね。ケータリングサービスをお持ちいたしました。お手数ですが、 お部屋に通していただけますでしょうか? セッティングさせていただきます」 いかにもホテルマンらしいサービス営業口調だ。 「浩ちゃん。はよ、お部屋開けてあげて!」 俺はむすっとしながら、自室の鍵を開ける。 サービスマン達は素早く部屋に侵入すると、手際よくテーブルセッティングを 開始した。 「お待ちの間に、コーヒーなどはいかがでしょうか?藤堂様」 「そうやね……。私はロシアン・ミルクティーでいいわ。浩ちゃんは?」 「……ビール!」 不機嫌そうに言ってみると、高級なグラスに盛られたビールが差し出された のには閉口した。 323 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 12 52 ID IONC9RsG 「ワインくらいしか用意してないと思ったのに……」 精一杯の我儘だったのだが、美佳は事もなく笑う。 「いやねぇ……、浩ちゃん。彼らだってプロなんよ? 芋焼酎だってあるわよねぇ?」 「い、いえ……。さすがにそこまで今回は……。次回からはご用意させていた だきます! 藤堂様!」 このホテルも、藤堂の名前は知れ渡っているという事か。 「では、失礼いたします。藤堂様、またのご用命をお待ちしております!」 手馴れた手つきで美佳が請求書にサインをし、サービスマン達は去って行った。 「浩ちゃん。これでやっと二人きりになれたね。あ、鴨のロースト切り分ける?」 いそいそと小皿に盛り付けてくれている美佳を、俺はやはり不思議そうに見 つめていた。 そこに、いきなり俺の携帯が鳴り響く。 着信通知を見る迄もない。この着メロは、いつも俺からの電話を待ちきれず に電話してくる怜奈だった。 「なぁに? 浩ちゃん。それ、何のメロディやの?」 ナプキンの上に小皿を置いた美佳が、俺の胸ポケットで鳴っている携帯音 に訝しそうに首をかしげる。 「ん? ああ、携帯が鳴ってるみたいだ。……ちょっとごめん、美佳」 俺はなんだか美佳の傍で携帯に出る事に対して、なぜか俺の中で危険信 号が働くのを感じた。 「へぇぇ……。最近の携帯はいろんな音楽が出るんやねぇ」 背後で美佳が不思議そうに言う。美佳は一体いつの携帯を使っているんだ? 旧家の育ちだから、新機種などは興味ないのかもしれない。いや、そもそも 携帯など持ち歩いていないのか。何しろ旧家のお嬢様だ、直接電話になんか 出る事も少ないだろう。 実家では送り迎えのSPが付き添って息が詰まると報告してきていた、毎年 何度か来ていた他愛のない挨拶葉書にも、写メール画像はおろか、携帯番 号やメルアドさえ書いてなかった事を思い出す。 だが今はそれ所じゃなかった。 胸ポケットを押さえたまま、洗面所へと場所を移して携帯を取り出す。 電話の向うで玲菜の不機嫌そうな顔が浮かんでくるようだった。 「もしもし!? 浩一郎? なんですぐ出てくれないのよ! 電話するって言っ たじゃない!」 ……やっぱりな。留守電機能をセットしておくほうがいいかもしれない。 「あ、ああ、ごめん。ちょっと電波状態が悪くてさ。こっちから電話するって言っ ただろう?」 一瞬、玲菜が黙り込む。しかし、そのまま黙ったままでいないのが玲菜だ。 「だって、いくら待ってもかかってこないんだもん! 従妹さんとは会えたわけ? あんまり可愛い子なんで、あたしの事なんて忘れてたんじゃないの?」 ――そう来たか。 「ああ、さっき駅まで迎えに行って、部屋に送り届けたよ。なんでそういう話に なるんだ? ちゃんと紹介するって言っただろ。変な邪推はよしてくれよ……」 俺を挑発しては怒らせ、すぐに玲菜が謝っては、甘い会話に持ち込む。 これがいつもの玲菜と俺の電話のやり取りだった。 だが、今日は少し事情が違う。あまり長電話をしていると、美佳が見に来そ うな気がしていた。 うぬぼれかも知れないが、今日の美佳の態度を見た限りでは、いきなり玲 菜の存在を知らせるのはまずい、と俺は感じている。 324 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 14 33 ID IONC9RsG 玲菜が俺のご機嫌取りを始める前に、俺はシャワーのコックを捻って水音 が玲菜に聞こえるようにすると、手短に玲菜に言った。 「ごめん、本当にごめん。今日はもう疲れてるんでまた明日な。風呂の中だか らもう切るぞ。明日、いつものところでまたな」 「え……?ちょ、ちょっとぉ! 浩一ろ……」 プツッ。ツー……ツー……。 一方的に携帯をオフにした。明日にでも謝ってご機嫌を取ろうと決めた。 明日は大量にスキンを買い込んで、玲菜を満足させてやればいい。 口やかましく我儘な事も多いが、玲菜の体は正直だ。 俺はそのまま携帯の電源を切ると、胸ポケットにしまって洗面所から出よう としてぎょっとした。洗面所の入り口に、美佳が立っていたのだ。 「な、なんだよ、美佳……! びっくりするじゃないか!」 美佳は手に自分のタオルを握り締めて伏目がちに俺を見上げた。 「だって……。食事の用意ができてるのにシャワーの音がしたんやもん……。 浩ちゃん、シャワー浴びるんなら、タオル使うかなぁ、って思って……」 瞬きをすれば、音が出るんじゃないかと思える程 黒くて長い睫毛が美佳の 瞳を隠している。一瞬、泣いているのかと思って、なぜか俺の胸が痛んだ。 「ああ、ごめん。電話してたら風呂場の汚れが目に付いてさ。話ながらシャワ ーで洗い流してたんだ。風呂は美佳の後でいいんだ。今日はお客様だもんな。 さぁ、食事にしようか」 我ながら驚くほどさらりと嘘が口から出る。そして俺は美佳の背中に手を当 てて、ケータリングの食卓へと促そうとした。が、美佳は顔を紅く染めたまま動 こうとしない。 「……美佳? どうした?」 「浩ちゃんより先にお風呂入るなんて、恥ずかしい……。男の人を差し置いて なんて、私、入った事ないんよ。浩ちゃん……」 抱きついてきた時の大胆さの微塵もない。古風な家で育った少女は皆こうな んだろうか? そりゃ、お嬢様は専用風呂をお持ちだろうから、後から他人が 使う事もないだろう。 俺は美佳の謙虚なのか天然なのかも不明な言葉に、奇妙な新鮮さを感じた。 「そ、そっか……。恥ずかしいか。じゃ、いっそ一緒に入るか? 美佳?」 つい冗談めいた言葉を発してしまう。その言葉で美佳がもっと紅くなるのが、 なんだかとても可愛らしかった。白い肌を耳まで紅く染めて俯いている。 「……」 「じょ、冗談だって! さあ、せっかくのご馳走が冷めちゃうから食べようぜ?」 頬を染めて無言のままの美佳の肩を抱くと、美佳はピクリと震えながら頷き、 益々顔を上気させながら、俺と一緒に食卓に戻った。 ――つづく 325 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 35 33 ID rw88VOBP 324 GJ! 話は非常に面白そう だけど、投下前に投下宣言と投下後に投下終了を告げた方がいいよ 326 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 44 55 ID qWtkzPtP 325 志村ー、ぐぐれ、ぐぐれー! したらばのヤンデレスレからの転載だぞ 327 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 21 57 45 ID cbpyfK1G 326 それってどこすか? 328 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 22 01 05 ID Gxf96Gx6 なんだよ他人の褌かよ ってか最近多いな転載房 329 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 22 01 54 ID zNAwzwNw てかしたらばにヤンデレスレとかあったのか 330 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 22 06 36 ID qWtkzPtP 327 つttp //jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/10206/1201790799/ 今携帯なんでURLおかしいかも(´・ω・`) 331 名前:Pinks ◆PinkSk5pfw [sage] 投稿日:2008/03/20(木) 22 19 38 ID j1V9ivVq すいません、そのSS書いた本人ですが……。 あそこはあくまで下書きスレで、エロパロに投下する段階では全くありません。 それにまだまだ終了のめども立っていません。 どういうつもりか知りませんが、無断転載はお断りします。 332 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 22 32 50 ID ZU0f1mlK (´_ゝ`) 333 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 23 16 37 ID An0gVjzW 330 つーか、ここにURL出していいもんじゃないだろ・・・ 334 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 00 14 06 ID fXMvFcdx 331氏… 晒されたお気持ちは察してあまりありますが… すごい連載なんです! 消さないでいただけないでしょうか。 GJなんです! 335 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 00 53 11 ID C+CzHub8 ID IONC9RsGを著作権侵害で告訴すればいいと思うわけだが 勝手に自分の作品を著作者の許可なしに貼り付けているわけだし 被害届を提出すればいい。今の時代、簡単に見つけられるから、 逮捕してもらえばいい 336 名前:Pinks ◆PinkSk5pfw [sage] 投稿日:2008/03/21(金) 01 24 15 ID /+K4WVHH え~とですね……。 告訴するほどの立派な作品ではありませんし、平日昼間に仕事を休んでまで、 趣味で書いてることで家裁に行く暇もありません。 それに、本当にこれってまだ、ただの下書きレベルのものなのです。 知り合いレベルに見てもらって、誤字とかを直したり僻地でのんびりやってたのですよ。 プロットは最後まで決まっているのですが、なかなか進展せずにずるずるときてしまい、 ともかく書き上げてから修正しようと思っていたものです。 ただ、かなり欝展開になるので、投下するつもりはありませんでした。 こちらが驚いてここに伺ったのは、今日もダラダラと自分のスレに投下するかと開いたら、 晒されてますよという書き込みを見て吃驚したからです。 あんな中途半端なもののコピペやURLを晒して、何がしたいのか、不思議でなりません。 ただ、他に書き込みに来てくれている現役の職人さんにまで、迷惑が及ばない事を祈っています。 長文にて失礼しました。 スレ住人の皆様にも、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。 337 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 01 34 47 ID My4xHj1C 336 悪いのは荒らしとこちらのスレの住人の不注意な行動です こちらこそ本当に申し訳ありませんでした 338 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 02 01 19 ID 7PH7kIAE 294 よう、俺w 俺もこないだ友人に薦められて読んだばかりww 中々楽しめたよ 楓には及ばんがなw 339 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 05 48 06 ID hscLdnKA 331 きめぇんだよ 小説家気取りの先生さんよ 340 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 06 29 50 ID e2Cdi4WG 339 転載房乙。 もうすんなよ。お前がネ申になれるわけじゃないんだ。 341 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 08 24 12 ID CJeuTJJe 339 黙れカス ばれなきゃあのまま続ける気でいたんだろクズが 密かにあそこの更新を楽しみにしてたのを台無しにしやがって氏ねよ 342 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 09 07 04 ID Gn3YQp4q 331様 もしこのスレを見ていらしたらすみません。 自分もリンクからあなたのスレを見に行きました。 全て読ませていただいてしまいました。 …あまりの素晴らしさに感動しました。 お願いします。引越しと削除は思いとどまってください。 できればあのまま連載を続けていただきたいです。 343 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 09 25 08 ID jUxAgTUN 荒れそうだからこの話題終了な 344 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 10 44 18 ID JkfdVpAI ヤンデレの元祖は改蔵の羽美ちゃんだと思うわけですよ あれはただの不思議さんだとは自分でもわかってはいるが 345 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 10 56 06 ID EH6HI3oB 少なくとも元祖ではないとオモ 346 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 10 58 51 ID E+Kqwl1y 元祖とか言うと神話からになっちゃうだろうしな 347 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 11 20 26 ID VDzHzOSa 元祖とか言うても、ヤンデレじみた逸話は大昔からあるしな 348 名前:名無しさん@ピンキー[kyd2enj] 投稿日:2008/03/21(金) 11 50 35 ID dCrJ/O/y 例えば、……何かあったっけ? 349 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 11 51 00 ID ZYPk2+6v 荒れそうじゃなくて荒れてんだよ! だいたいなんで即レス付けたんだ? 326 330 お前いつもこことそのサイト見てるからだろ 携帯でまでチェックしてるほどかのサイトに固執してたんだろ 339の転載厨= 326 #160; 330 >きめぇんだよ #160; >小説家気取りの先生さんよ #160; 馬鹿じゃね?醜い負け犬根性丸出しで吠えてんじゃねーよ その二言でお前のチンケな劣等感がもろに見えてるんだよ! 少なくとも俺はずっと楽しみにしてたんだ! ここに投下してない職人になら何しても問題ないみたいな発言はやめろ すっげ腹立つ 350 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 11 55 17 ID VDzHzOSa ↓↓↓以下何事もなかったかのように再開↓↓↓ 351 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 03 24 ID fXMvFcdx 何事もなかった事にはできないでしょ…さすがにやりすぎだよ 今回の件は 352 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 11 07 ID xJvvMSca 嫉妬スレが崩壊した理由は住人がバカすぎて、 荒らしの自作自演を見抜けなかったことにある さて、ヤンデレスレ住人はバカではないことを証明できるか 353 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 23 33 ID ZYPk2+6v 以下荒らしの釣りと自演 317-324 326 #160; 330 #160; 332 339 352 他所のスレ住人をバカ呼ばわりとはお前何様だ? 下手糞な釣りはやめとけ 354 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 28 53 ID E+Kqwl1y 神話のヤンデレで有名なのって誰だ? ヘラとか? 355 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 33 01 ID /fT/TFIB ギリシャ神話はヤンデレ多いって聞いたことあるけどなあ。 昨日からの流れ見て驚いたんだが、未来日記ってあんまり知られてないのか? ここの住人なら当然抑えてると思ってたんだが。 まあ個人的には由乃はあんまり萌えなかったが 普通にかわいい女の子に見えてしまって 356 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 44 18 ID mhN7SY9O 俺も知らんかった まぁ俺はあまり漫画とか小説はチェックしてなかったからあれだけど 357 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/21(金) 12 50 04 ID jhVYtIDj 347 #160; 350以外全て単発IDな件について 必死だな 358 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 12 57 58 ID gLS6D3GR 擁護で騒ぐのもいい加減にやめろ 336氏が自作自演でここを荒らしている、 という結論にもって行きたい荒らしの目論見にまんまとはまってるのがわからないのか? 過去ログよく読み返してみろ なんでこんな事ぐらいにも気がつかないんだ その程度もわからない厨なら、氏のファンなどとおこがましい事をほざくな 359 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 06 01 ID jjrKLG/8 いい加減長文でスレ消費すんのやめたら? さっさと忘れろよ 360 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 19 05 ID /fT/TFIB 356 ん~。 ヤンデレ大全ぐらいしかまとめてくれているところって無いからしかたないかなあ。 もうちょっと系統立ててまとめられればいいんだけどねえ。 といっても定義するだけで議論になるぐらいだから難しいかもしれんが 361 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 23 18 ID LwSJqL/8 じゃお前が責任もってレス削除依頼出してこいよ。 ID変えてる暇があるんだからさ。 362 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 38 36 ID VDzHzOSa 無様 363 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 45 40 ID LwSJqL/8 362 携帯厨に言われたかねえな 一人芝居乙。 364 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 52 13 ID xJvvMSca 何か嫉妬スレみたいに自作自演で荒れてきたな 荒らしは粘着で頭がおかしいからスルーしていても、 住人を装った荒らしがすぐに話を振り返るから 完全にスルーしてヤンデレ話をすればいい 365 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 02 57 ID LwSJqL/8 誤爆で自慢してやがるのもお前だろ 366 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 15 08 ID fXMvFcdx 364 素直な質問なんだけど、自作自演ってどのレス? アンカーつけて説明してくれない? 367 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 18 23 ID ci1TlVYZ 単発IDで擁護したり叩いている奴は自作自演の荒らし 正直に言うと、本当に手口とかは幼稚すぎる。 368 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 19 23 ID w+LrACgH 「あなたがいないとダメなの!」って感じに男に依存 するのもヤンデレなのか? 369 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 22 48 ID fV2Zze0E 367 だからなんで違うIDが答えるんだよ 具体的にアンカーつけてどれが擁護でどれが叩きなのかそこまでやれよ ID変えてる暇があるんだから(ry 370 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 25 36 ID fV2Zze0E 353はちゃんとアンカーつけて荒らし指定してるじゃないか それと携帯厨のID VDzHzOSaな どうみても追い詰められて話をそらそうとしてるようにしか見えない 371 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 28 39 ID fV2Zze0E 364 >自作自演で荒れてきた 自作自演も荒らしてるもお前だろ PCからのID VDzHzOSa 372 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 32 53 ID xLEVKPVk ヤンデレに愛されて眠れないCD聞いたが ありゃヤンデレっていうか猟奇娘だよな 373 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 34 15 ID w+LrACgH 372 kwsk 374 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 35 56 ID LpcOAw1A 372 禿同 ヤンデレ大全といい、あのCDといい、どうしてこう分かってないのか いや、商業主義的に考えてインパクトが無い、と普通のヤンデレ案では却下されたのかもしれないが 375 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 36 00 ID EOKPgj40 372 その辺わかってない人多いよな 376 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 41 33 ID W2UwLP4F 取り敢えず刺せばヤンデレ、取り敢えず流血沙汰を起こせばヤンデレ、取り敢えず病んでりゃヤンデレ こんな風に勘違いしてる奴が増えてきたとは思う 別に「カリフォルニア巻きは寿司じゃない」みたいなことは言わないが 「米を使えばみんな寿司」みたいな風潮は勘弁して欲しい 377 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 42 05 ID EH6HI3oB 裏でネチネチと謀略をめぐらすより 刃物持ち出したりした方が受けがいいのかね 378 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 44 38 ID OGG09y47 刃物なんて出すなんてキチガイすぎるw 更に愛しい彼よりも泥棒猫を惨殺しなきゃダメだろw 379 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 45 17 ID jjrKLG/8 結局インパクトなんだろうな 「わかりやすい、目に見えやすい」ってことが重要なんじゃね 380 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 46 14 ID w+LrACgH その辺はやっぱメディアのアレだろう。地味で分かりづらいものより派手で分かりやすいものの方が人多く惹き付けるから でもそれが氾濫すると辟易する。 381 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 51 18 ID OGG09y47 せめて、ヤンデレヒロインが病んで行く描写の過程をちゃんとしてから ヤンデレ化→主人公にアプローチ→HAPPYEND 空鍋ヒロインと鋸ヒロインには軽い工程だなw 382 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 51 22 ID xLEVKPVk 妹→凄み入れるとこで笑ったが全体的に良 幼なじみ→五寸釘笑ったwww 同級生→静かに狂ってるある意味一番病んでる 個人的にはこんな感想 383 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 14 59 32 ID LpcOAw1A だから三パートになんかせず、46分通しで一人のヒロインを描けばよかったんだよ、アレは 大体登場キャラは病んではいるけどデレがねえよ あるとしても自分に対するデレだ、ありゃあ 384 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 02 55 ID WzoRcdTx 前スレだったか前々スレだったか忘れたが、日本書紀にヤンデレがいるとかいないとか議論されてた 385 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 08 25 ID 7pCmFfvk >ヤンデレ化→主人公にアプローチ→HAPPYEND #160; 軽い・・・軽すぎる ライトポップなヤンデラーなんか真のヤンデラーじゃない! とことん泥沼化しヤンデレヒロイン一人にとってのハッピーエンド、周囲にはバッドエンド これぞ真のヤンデレ道だ! 386 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 09 28 ID My4xHj1C 372 俺は嫉妬深い女の子って感じで聞いてたけどな 387 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 11 01 ID jjrKLG/8 385 待て、HAPPYENDが誰にとってのものかを考えてみるんだ 388 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 15 15 ID 7pCmFfvk 世界観が破綻してもヤンデレ娘にとって幸福と思える環境 HAPPYENDはヤンデレ娘のためにあるんだー 精神病院の一室に閉じ込められても、男を独占していると思い込めればそれで幸せなヤンデレ娘に萌え サイコっぽいヤンデレ娘に惹かれるものこそ真のヤンデラーだと俺は力説する!(鼻血 389 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 18 11 ID EOKPgj40 387 愛する彼の為のものに決まっておろう 390 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 23 04 ID jjrKLG/8 389 だとしたら 「愛する彼は私と一緒にいれば幸せになれる」 「あの女の所へ行けば不幸になる」 とか言って 主人公もそれに染まっていく…のはどうなんだ? ちょっと混乱してきた 391 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 56 32 ID EOKPgj40 390 彼の幸せはヤンデレ娘の認める幸せしか存在しないから それもまたHAPPYENDかもしれないってことじゃないかね 392 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/21(金) 16 03 30 ID Q9cc5D5p 自演雑談の撒き餌バレバレワロスw うんこSS早く投下しろクズ うんこw 393 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/21(金) 16 05 06 ID Q9cc5D5p うんこSSまだああああああああああ!? まちきれないのおおおおおおおおおおおおおwwwwww うんこおおおおおおおおwwww うんこっこw 394 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 08 52 ID xLEVKPVk 春だなぁ 395 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 09 55 ID qM136tbo やはりヤンデレ道は奥が深いですな・・ 396 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/03/21(金) 16 09 59 ID Q9cc5D5p 自己顕示欲だけは旺盛な小説家気取りのうんこの行動は見てて笑えるおw 早くご自慢の必死こいて書いたうんこ駄文投下するおw 自演の2、3レスしかつかないけどうんこw 」 うんっこおおおおおおおおおwwww うんこっこw 397 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 12 45 ID jjrKLG/8 391 なるほど、thx まだまだ俺は修行が足りんな… しゃっほー第一話から見直してくるわ 398 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 21 13 ID JkfdVpAI というかヤンデレは自分の幸せ=頭の中の彼の幸せだと思う 399 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 25 33 ID W2UwLP4F 398 それだな 少しずれてる幸福論だから世間には悲劇だとか言われちゃうわけですね 400 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 16 35 14 ID jjrKLG/8 398 一気に解決した よし、これで妄想し放題だぜヒャッハァ!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/943.html
881 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 45 15 ID y+UJCjSs <ヤンデレ外交> 「定例協議、ですか」 「そうだ。何事もない、一年に一度の会合だ。 ローレベルの技術協力と協調姿勢を淡々と発表する規定路線の会合。 具体的には、二国間の海上に不法投棄されているペットボトルの除去作業の打ち合わせ、だ。 それ以上のことは何もない。……何一つ、ない」 「とは言え、今の時期は正直……微妙ですね」 「その通りだ。あの国は、国際的な借金の返済に首が回らん。 だから──わが国からなんとしても援助を引き出したい。 たとえペットボトル除去作業の会合でも、なんらかの言質をとろうと必死だ」 「ムリですよ。あの国と、我が国では、通過対策のスタンスが真逆(まぎゃく)です。 あちらが援助を求めてくるにしても、何もできることはありません。こちら的も、あちら的も。」 「だが、連中には「あれ」がある」 上司が唇がさらに歪めた。 「……ハニートラップ、ですか」 隣国の外交官や政治家を美女の接待で篭絡し、脅迫し、言質を取る。 おおよそ、下劣で、そして効果的な一手。 大国の外交官がそれに引っかかり、大幅な譲歩を迫られたことは記憶に新しい。 「だから、君だ」 上司は、その会合に僕を行かせるつもりらしい。 少し話が見えない。 「それはかまいませんが、なんで僕なんです?」 ハニートラップ対策は、女に強く、冷静で、抜け目ない男が適任だ。 自慢じゃないが、僕はその当りは非常に自信がない。 女に弱い──というより、縁がなさ過ぎて体制がまったくない。 何しろ、同期で嫁さんどころか恋人もいないのは僕一人だ。 コンビニの女店員に笑顔でお釣りを手渡しされただけで舞い上がる人間に、 そんな役目は難しすぎるのではないか。 「それについては、心配ない。君には専門家と組んでもらう」 「専門家?」 「知っているだろう、桐山だ」 上司は意味ありげな表情でそう言った。 882 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 45 46 ID y+UJCjSs 「桐山と組むのは久しぶりだね」 「はい。とても嬉しいです」 行きの飛行機の中で、桐山那美(きりやま・なみ)は微笑んだ。 眼鏡とセミロングの黒髪がお似合いの、おとなしそうな娘だ。 僕にとって、かなり年下の後輩の彼女と組むのは、これで三回目くらいか。 地味だけど、非常に有能なサポーターということは覚えている。 僕がまともに喋れる数少ない女性だ。 「しかし、意外だね」 「はい?」 「桐山が、その……そういうのの専門家だっていうこと」 あの後、上司は詳しく説明してくれなかったが、 この仕事で僕と組ませるということは、彼女はそういうことに精通していると言うことだろう。 「ええ、私、専門家ですよ。――こういうことについては、とても。たぶん、世界で一番です」 「大きく出たな」 僕は苦笑した。 おとなしく見える彼女を見ると、とても意外だけど。 まあ、彼女は、とても有能な外交官だ。 そういう技術も隠し持っていてもおかしくはないのかも知れない。 くわばらくわばら。 桐山の有能さは、すぐに証明された。 あちらの指定のホテルにチェックインするや否や、 彼女は、1ダースの盗聴器と3つのビデオカメラを見つけ出し、無力化した。 特殊部隊のような手際のよさに、唖然とする僕を尻目に、 今度は、ルームサービスの料理からいくつかの薬品を検出する。 多量の精力剤と、小量の思考を緩慢にするクスリ。 ──翌日の会食でアルコールを入れれば、理性より性欲が勝った状態にされるだろう。 ボーイに気付かれないように料理を廃棄した桐山が、 代わりにバッグの中から取り出してきた手作り弁当は、とてもうまかった。 「本当に専門家なんだな」 「ええ。専門家ですよ。世界で一番の」 家庭的なおかずが詰められた弁当からは想像もつかない彼女の活躍に、 僕は、素直に感心していた──この時までは。 883 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 46 16 ID y+UJCjSs 「それで──何を?」 「い、いえ……その……」 僕の正面に座ったコンパニオンを見据える桐山の目は、冷たい、を通り越して、怖い。 協議会が無事におわり、会食がはじまってから、この状態だった。 僕の隣に座ろうとした美人コンパニオンを突き飛ばすようにして席を取ってから、 二時間、おおよそ、物を食べるという雰囲気ではない。 「それで、ですな。ぜひ我が国との……」 「──そちらの女性は、どこを見ているのですか?」 「い、いえ、私は、な、何も……」 「嘘をおっしゃい。妙な目で──さんを見ているようですが」 「す、すみません」 「謝るということは、認めたということですね?」 「わ、我が国との……」 「少し黙っていただけますか、私、この方とお話をさせていただいていますの」 「いや、その……はい……」 協議会で、さかんに援助をアプローチしてきたなんとか局長氏は、 脂汗をかきながら引き下がった。 無理もない、僕だって逆の立場だったら、こんな雰囲気の接待はゴメンだ。 しかし、桐山のおかげで、変な方向に話を持ってかれなくて済む。 おびえた目のコンパニオンたちは、しきりに席をはずしたがり、ついには帰ってしまった。 「……」 「……」 双方、無言のまま軽食は終わり、結局僕らは何の言質も与えることなく 協議会を終わらせることが出来た。 884 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 46 47 ID y+UJCjSs 「ご自慢のハニートラップも、不発か。よかったよかった」 ホテルに帰ってくつろぎながら僕はつぶやいた。 桐山が調べなおした部屋からは盗聴器とビデオカメラがまた幾つか出てきたけど、 それも彼女が無力化したから、僕は気楽なものだ。 隣の部屋に下がった桐山からもらった薬を飲む。 さっきの会食で出された料理の中に変なクスリを仕込まれていても、 無害化できる解毒薬だそうだ。 桐山が調達してきた飲み物で飲み下してから、 これもやはり彼女が調達してきたサンドイッチに手を伸ばす。 「何から何まで完璧だな。さすが専門家」 帰ったら、なにか奢らなきゃな、とつぶやきながら、僕はソファに横になった。 「あれ?」 なんだか、頭がくらくらする。 何か、おかしい。 身体だけじゃない。 ……目の前のソファの隙間に押し込んであるのは、盗聴器じゃないのか? 「しまった。連中、まだ諦めてないのか」 僕は、ふらつく頭を抑えながら、盗聴器を引きずり出し、桐山の部屋に向かった。 「気をつけろ。連中のトラップがまだ生きて……?!」 ドアを開けてくれた桐山の部屋になだれ込んで、僕は絶句した。 部屋の中央、テーブルの上にあるのは、小型の受信機とヘッドフォン。それに最新鋭のジャマー。 荒事に疎い僕も知っている──盗聴の道具だ。 「これ……は?」 「あ、大丈夫です。それ、私のつけたほうの盗聴器ですから」 「え?」 振り向いた僕の目に、はじめて見る女の人が入ってきた。 潤んだ目が焦点を失い妖しく輝き、唇には薄笑いが浮かぶ、怖い女の人。 これは──誰? 「き、きりやま……?」 思わず口からこぼれた誰何の声に対する返事は、 かちゃりという、音。 すでにオートロックで閉められているドアに、さらにチェーンロックを追加する、音。 885 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 47 23 ID y+UJCjSs 「――さん、やっと来てくれたんですね、私のもとに」 桐山──は、ゆらりと僕に近づいた。 「ちょ、まっ……何を言っている?」 向き直ろうとして、僕の足がもつれる。 なんだ、身体の自由が利かない。 クスリを盛られたのか──誰に? 「き、桐山、話は後だ。クスリを盛られた。解毒剤を──」 「え? 解毒剤ですか。持っていませんわ」 「そんな。君は専門家じゃ……」 くらくらする頭で、僕は抗議をした。 そうだ。 彼女はハニートラップ対策の専門家で、だから僕と組まされて……。 「ええ。専門家ですよ。あなたのストーキングの」 「……え?」 「知りませんでした? 私、ずっとあなたのことが好きだったんですよ」 予想もしなかった返事に、顔を上げる。 桐山──いや、僕が今、はじめて「出会った」女性は、 頬を赤く染めながら、スカートの中にさし入れていた手を引き出すところだった。 「ほら、盗聴器から聞こえるあなたの声を聞いているだけで、私こんなに……。 毎日、毎日。こうしてあなたの声を聞いて慰めていたんです」 「き、きり……」 「でも、ほんと、こっちのスパイさんたちってマヌケですよね。 盗聴器って、もっと丁寧に、もっといっぱい、もっと愛情をこめて仕掛けるものなんですよ。 私があなたの部屋に仕掛けている盗聴器とビデオカメラをみせてあげたいくらい。 あ、ソファの間にしかけたそれは、わざとです。見つかるように、しかけました」 「なんで……」 「だって、そうすれば、私を呼ぶか、私の部屋に来てくださるじゃないですか。今みたいに」 朦朧とする頭を振って立ち上がろうとする。 「あ、ダメですよ。さっきのサンドイッチとジュースに入れたお薬、強力なんです。 ルームサービスとか、会食の料理に入っていたお薬よりずっと。 大丈夫、一晩、私とすごせば、全部抜けますから」 にんまりと笑ってのしかかってくる怪物は──。 僕はもちろん、さっきのスパイどもにも手の負える相手じゃなかった。 886 :ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] :2008/10/12(日) 11 50 03 ID y+UJCjSs 「……あの国が破産宣言したな」 「あれから色々と悪あがきをしたようですね」 「ローレベル協議で、何も確約をしなかったことが生きてきた。君のお手柄だな」 「……専門家のフォローがありましたからね」 倦怠感を覚えながら、僕は答えた。 上司は無表情のまま、辞令を渡してきた。 「君と、君のパートナーの対応力を買って、昇進だ。 今度はあの国の駐在大使になってもらおう。再建問題で忙しくなるぞ」 「これはまた、えらい出世ですね」 「これから、色々と物騒になる国だ。 駐在大使にハニートラップをしかけて色々と譲歩をせまるだろうし、 ──あるいは、もっと単純な恫喝や拉致なども予想される」 「ひどい話ですね」 「もちろん、護衛はたっぷりとつけるさ。 だが、何より重要なのは、君には、二十四時間君を監視し、 フォローする人間がついているということだ。 しかも、どんなプロよりも熱心な専門家が、だ」 「……ベッドの中までね」 ため息をつきそうになって、あわててこらえる。 どうせ、今の会話も盗聴されてる。 桐山──いや、今は僕と同じ苗字になった女性に、だ。 「もし、あの国のエージェントが、拉致監禁したくても、 ──すでに監禁されている男を拉致できるかね?」 「……たぶん、盗聴一つできないでしょうね」 「さらに言えば、君に近づく女性……それもおそらく訓練をつんだプロさえも 「なぜか」突然行方不明になるような完璧なガードを私有する男なら、なおさらね」 「……」 「君には、いや、君たちには期待しているよ。駐在大使どの」 上司は、最後ににやりと笑って手を振った。 協議会からの帰国後すぐにあげさせられた僕と桐山の結婚式で 仲人を務めたクソジジイの顔をひとにらみしてから僕は部屋を出た。 「昇進か。今夜はご馳走だといいな」 ふと、つぶやいてみる。 家に帰れば、多分、食卓には、僕の好物がずらりとならんでいるだろう。 何か、変なクスリとかが、たっぷりと入ったご馳走が。 ──駐在先でのスパイや危険など、僕の日常に比べたら、空気みたいなものだ。 fin